第4章 夜桜月見と三日月宗近.. 𓈒𓏸
縁側に雑誌を置いたまま美桜と二振りは甘い物でも食べようと話し、茶菓子とお茶を取りに厨に行った。
三人で少し離れた間、縁側には置きっぱなしの雑誌だけが残されていた。
美桜に会いに来た三日月は縁側に置きっぱなしになっていた雑誌に目が留まり手に取り、ページをめくる。
色鮮やかな写真、見慣れない字体、紙の手触り。
普段、自分の周りにはないものばかりであった。
パラパラと軽やかな音をたてながらページをめくる中で光る小さな輪――結婚指輪の写真に目が止まる。
「指輪……か」
あまり表情には出さず、心の中でふむ、と考える。
これは契とは異なる文化での、特別な意味を持つものなのだろう。
なるほど、と理解を巡らせつつも、静かにページを追う。
そのとき、先に戻ってきた乱が声をかける。
「あれ、三日月さん?何してるの?」
三日月は乱に気付くと微かに肩をすくめる程度で答えた。
「はっはっは……主に会いに来たのだが、この書物が目に入ってな」
続いて清光が厨から戻って来て顔を出す。
「あれ?三日月?」
視線は乱と三日月へ向き
「主、燭台切と歌仙に夕餉の相談されたから少し遅れるって〜」
清光が乱と三日月に向かい不思議そうにしながら
「で、何の話してたの?」
三日月は穏やかに微笑み、雑誌のあるページを指差した。
三振りでページを覗き込み、三日月は雑誌という書物が現代にはある事やそのページに載っていた指輪のことを聞き、淡々と心の中で整理しながら答える。
縁側に、揺れる桜の花びらがページに光を落とす。
三日月の胸中では、未知の文化と光る輪の意味が、静かにざわめき始めていた。