第3章 夏祭りと山姥切長義.. 𓈒𓏸
『あれがいい!』
私はくまのぬいぐるみを指差して笑顔で答えた。
長義は少し微笑みながら射的用のコルクガンを構えると、的に狙いを定めた。
長義の銃を構え、狙いを定め片目を瞑っている姿を横からそっと盗み見た。
長い睫毛と端正な横顔が提灯の灯りに照らされて、キュンとした。
パンッと引き金を引きコルクガンの音が鳴ると、コルクはくまのぬいぐるみを捕え、コトンと倒れた。
ぬいぐるみに当たると陸奥守が長義にくまのぬいぐるみを手渡した。
「おぉ!一発で当てるとは、おんし中々やるのぉ…!」
長義は陸奥守の言葉に、いつも通りクールな表情のまま
小さくフッと口角を上げ、陸奥守から手渡されたぬいぐるみを美桜に差し出した。
私は長義から受け取ると胸元でぎゅっとくまのぬいぐるみを抱きしめた。
『長義……ありがとうっ!』
少し照れながらも、嬉しさで胸がいっぱいになる。
「構わないよ…貴方に喜んでもらえるのは嬉しいものだな…」
長義は珍しく少し照れくさそうにしていた。
視線や仕草、そして長義との小さな思い出が確かに二人の距離を縮めていた。
庭の奥では花火が静かに打ち上がり始め、赤や青の光が二人の影を濃く映す。音と光のリズムが、二人の呼吸に重なり、時間がゆっくりと流れていく。