第2章 伝えたい恋心と鶴丸国永.. 𓈒𓏸
柔らかな闇に変わった縁側。
外の世界は日没とともに静けさを増し、影が長く伸びていく。
だが鶴丸の胸の内はその静寂とは裏腹に
独占したいという想いで熱くざわめいていた
――夜の闇のように深く、じわじわと満ちていく。
それでも鶴丸の姿は軽やかでありながらも、
どこか儚げな光を放つようだった。
白い内番服はまるで鶴の羽のように柔らかく
歩くたびに裾が風に揺れた。
その仕草や笑みは、昼間のいたずらや冗談を思い起こさせる
明るく軽快な光の一片のようで、鶴丸の心の闇と対照的に映る。
まるで昼も夜も、鶴丸そのものが舞っているかのようだった――
軽やかに、自由に、でも誰にも渡したくない想いを胸に抱えながら。
風がそよぎ、夜の匂いが淡く広がる中
鶴丸の視線は美桜から一瞬も離れない。
昼間から募らせていた想い、独占欲――すべてが今、静かに爆発する瞬間を待っていた。
「……もう、限界だな」
『え?』
冗談めかした声に混ざる、微かな緊張感。
鶴丸はスッと距離を詰め、私の手に自分の手を重ねた。
その大きく筋張っていて、刀を振るう為に少し硬く、
けれども少し冷たいが柔らかな暖かさを持つ鶴丸の手に、胸が高鳴る。
私は驚きながらも、鶴丸の真剣な瞳に引き込まれる。
『……鶴丸さん……?』
私のその声に、鶴丸はにっこりと笑みを浮かべた。
「なぁ主、俺の前だけで笑ってほしいんだ。ほかの誰でもない、俺にだけ」
私は息を呑むが、まだ鶴丸の本心を読み切れなかった。
鶴丸は自分の額を私の額に合わせるくらい顔を近付かせ、金色の瞳を輝かせる。
(……俺だけのものに、君から望んでくれればいいのにな…)
鶴丸との距離に私は驚き固まっていた。
夜の静けさが二人を包む。
柔らかな闇に沈む縁側で、鶴丸の一途さと独占欲は
昼間の数倍に濃く、しかし静かに美桜だけに向かっていた。
そしてその時間から、外界とは切り離されたような二人だけの秘密の世界となっていくようだった…。