第2章 伝えたい恋心と鶴丸国永.. 𓈒𓏸
審神者部屋へ続く縁側を歩きながら、日差しは少しずつ橙色から深い茜色に変わっていった。
空気は静かで、他の刀剣男士達の気配はほとんどなく、鳥の声と風のそよぎだけが耳に届く。
鶴丸は肩越しにちらりと美桜を見やり、柔らかい笑みを浮かべたが
(……もう我慢の限界だ)
鶴丸に支えられたまま、審神者部屋の前の縁側まで来ると
「……少し座るか」
『はい』
軽く笑いながら言うその声に、ほんのわずかの鋭さが混じる。
私は鶴丸の声色に鋭さが混じったのに気付かず素直に頷き、縁側に腰を下ろすと鶴丸も隣に座った。
しばらくの間、二人の間には静寂が流れた。
しかしその沈黙の中で、鶴丸の視線は相変わらず美桜の一挙一動に釘付けだった。
髪を耳にかける仕草、手元の動き、微かな息遣い
――すべて、鶴丸の心を掴んで離さない。
(……俺だけのものにしたい、君のすべてを)
「……なあ、主、今日はもう少しこうしていてくれないか」
鶴丸がそう言った時その声は、冗談めかしながらも
どこか独占欲を滲ませていた。
私はそんな鶴丸に気付かず、ただ微笑んだ。
『いいですよ。今日の鶴丸さんは少し甘えん坊さんですね』
鶴丸の笑みは隠された闇が見えるようだった。
夕陽は徐々に沈み、縁側に落ちる影は長く濃くなる。
柔らかな闇に包まれながら、鶴丸の心はさらに熱くそして静かに
美桜だけに向けられていた。