第5章 ふわりふわり揺れる思い
聖臣side
誰にも悟られないように、沙耶の手を離さないようにしていただけだ。
弱さを吐かせたところで、全てがクリアになるわけじゃない。
アイツらに言ったことも強がりにしかならない。
「佐久早君が仕向けたからって、何でも言うわけじゃない。
けど、結局俺らよりも佐久早君には、甘えてるってことやん。
あんなに不安そうにしている沙耶を散々見てきたのに、それでも、本音を言ってないってことや。
俺は…沙耶の何を見とったんやろう」
沈む宮侑に、目を逸らした宮治もまた、片割れ以上に悔いているように見えた。
「本音か…正直俺よりもいつも近くにいる聖臣の方が、沙耶の事を一番に理解しているって分かっているけど、それでも、心底自分にムカつくよ」
元也も自分を責めているけど、それは違う。
俺に言わない事だって多々あるし、元也の方に相談することも多い。
それを元也は、知らないだけだ。
「沙耶が、何も言わないのは分かった。
佐久早だけ気づいた事って、必ず予兆なり素振りとかあったかもしれんへんやろ?
少なくともツムは、少し気づいたってことや。
佐久早の言う通り、隠そうとするなら引き出せばいい。
これからの沙耶には、必要なことや」
「そう、うまくいけばいいけどな」
「なんや?佐久早どう言う意味で言ってる?」
「そのまんまの意味だ。
宮侑には、少し分かってきたらしいけど、結局そこまでだった。
お前は、それにも気づかないのにどうやって引き出せる?
そう、うまくいくわけじゃない!甘いんだよ」
言った先から、今度は宮治が襟を掴みにかかると、双子の片割れがやけに冷静でいる。
「サム、やめろ!そんなことしたって無駄や!
佐久早君かて弱音を吐かせたところで、改善なんかしとらんかったやろ?
今回のことだって、食べれるようになるまで俺は、根気よく付き合った。
そんなもん一時のことや、積み重ねた重荷は、そう簡単になくなるわけやない。
佐久早君かて分かっとるやろ?」
何も分かってない奴に、言われたくはなかったが、宮侑の言ったことも一理ある。
「分かっているから支えてやらないと、本当に何処かに行ってしまう」
あの日に帰らせないための対策がいると思えた。