第5章 ふわりふわり揺れる思い
聖臣side
宮侑の視線が、じっと俺を捉える。
相手の出方を見ているのか?声を掛ける言葉を選んでいるのか?いや…後者じゃない。
内容次第じゃ帰らないかもしれない。
だったら…
「言いたい事が、あるなら言うて欲しいんやけど?
沙耶に何かあった?」
「………」
黙り込む俺に対して、宮侑から溜息が漏れた。
「もしかして、手術の間に話した事でも関係があるのか?
ふとした時に冷めた目をした別人のような感じがするって、沙耶なのに沙耶じゃないって話?」
「なんやねんそれ?ツム説明せぇよ」
宮治も元也も何のことか検討つかず、疑問を抱いている。
タイミングは悪い、まさか切り出してくるとは思ってもいなかった。
チッと舌打ちをすれば怪訝そうに麿眉毛が、ピクリと動く。
「聖臣…俺にも分かるように説明してよ!侑君と聖臣しかわかってないって言うか、二人しか気づいていない事?」
あぁ嫌だ…こう言う時に限って当ててくる元也が、ウザい。
「別にいつもそんな風じゃない…」
「だったらなんや?分かるように説明してくれんと、俺かて沙耶の事が、心配なんや」
こうなったら宮治にも話さないとダメか。
「一時、食べる物も受け付けられなくて嘔吐を繰り返してた時があったよな。
そん時、沙耶が言ったんだ、『私は、前とは違う…』って、それだけじゃない記憶がない事も知っていた」
「えっ?知ってたって?佐久早君、ホンマに?沙耶は、記憶が無いってわかってたんか?
どこまでや!どこまでわかっているんや?」
『落ち着けや!』と怒声を聞かせた宮治は、片割れを押さえ込む。
「沙耶は、あるはずの記憶がないって思っていたらしい。
実際、俺達と噛み合わない話に疑問を持っていたし、そこには共通としてバレーが存在してたからな。
自分が、関わってたんじゃないかって、だから沙耶自信、記憶がない事を考えないようにしていた。
俺もお前らも”沙耶の記憶”から、不自然に避けていた。
自分を腫れ物扱いして、好きだって言った事も自分が、かわいそうな人だからって信じてなかった。
それに、手術しても体が元に戻らないかもって不安で泣いたんだ」
震える体も心も冷え切って、沙耶が沙耶じゃなくなるように思えた。