第5章 ふわりふわり揺れる思い
聖臣side
「正直、お前らがその怖い先輩に怒られようが、何されようが知るかよ。
秋には春高の予選もあるし、サボって負けたりでもしたら沙耶が、気にする」
「はぁ?何言ってんの?俺らは、負けへんよ!今回は、全員ぶっ潰しに行くつもりや。
今のうちに、佐久早君も古森君も覚悟決めといた方が、えぇんちゃう?」
相変わらず好戦的、元也もその言葉を聞いて反応している。
「へぇ~侑君って負けず嫌いだとは思ってたけど、聖臣と同じぐらいズケズケと本音言うタイプ?」
「そうやねん~ツムは、そう言う言い方しかできへんねん。
人に嫌われようが、陰口言われようが、お構いなしや。
もうちょい、人の事考えて言うて欲しいと思うけど、こいつは人として最低やからな。
こんな風に育ったらフォローする気にもならへんし、この性格は死んでも直らん」
宮治も大概だな。
俺と一緒なんて言われるのは癪に触るけど、本音を隠すことなんてないし、それを言って嫌われるなら別にそれでいい。
自分が思っている事を口にして、何が悪いのか?
それが間違っているなら謝ればいいだけの事、でもアイツにそれはないだろうな。
「なんで、自分の思っている事言ったらあかんの?
そんな人の顔色窺ってたら、自分で無くなるで!
俺は、俺の思っている事を言ってるだけや」
「それで、傷ついた奴いっぱいいたけどな?
ホンマに両手で足りんし、女も男も関係ないやんなツムは?」
『なんやねんそれ?俺は悪ない』と不貞腐れる片割れを見て、宮治から溜息が漏れていた。
「沙耶に、そう言うこと言ったことあるのか?」
俺の質問に目を丸くする双子。
「そんな事した覚えないぞ!なぁサム?」
「確かに、沙耶に対してそんな事、見たことないなぁ。
もし、言ってたとしても沙耶自身、飲み込むタイプやろうから顔色窺いながら聞いとるかも」
宮治の判断は、正しい。
不安定になればなる程、爆破した時の反動であの時の様に、自分自身を傷つける言い方をするかもしれない。
「宮侑、お前の発言で沙耶を不安定にさせるなよ!
沙耶のあの姿を見れば、どうなるかなんてわからないか…」
思わず口走った言葉に詰まる。
それを見逃してくれると思ってもいなかったが、宮侑から溜息と険しい表情が垣間見えた。