第5章 ふわりふわり揺れる思い
聖臣side
一触即発のように思えた空気も、元也と宮治に抑えられ収束した途端、宮侑から笑い声が聞こえてくる。
「何がおかしい?」
「あははは、いや~すまんすまん!悪気があって笑ったんやない。
俺も佐久早君も沙耶対して、本気なんやなって思ったら、もしこの場に沙耶がいたら、口聞いてもらえなくなるかもって想像したんや。
頬膨らまして怒っても沙耶は、可愛いやろうなって」
確かに、この場にいたら一目散で怒るんだろうな。
それに、宮侑の言う通り女たらしなアイツを差し引きしても今は、純粋に沙耶が好きなのはわかる。
それでも、繋いだ手を離すつもりは毛頭ないし、これからだってない。
あるとすれば・・・沙耶が、俺以外の手を取った時以外ないかもな。
当然、そうさせるつもりもないけど。
「小難しい顔しとるなぁ、佐久早君って脳内で考える派?」
沙耶が、いつも笑いながら眉間をぐりぐりする行為と重なって、アイツの手を振り解く。
「やめろ!触るな」
「恥ずかしいんか?それとも、沙耶がしとったりして?」
「うざっ!別にそんなんじゃねぇ」
バカバカしい。
沙耶と重ねるなんて、アホらしい。
「ツムも佐久早もいつの間にか仲良くなっとるん?
さっきまで喧嘩しとったのは、気のせいか? 」
「いや、サムの言うことは当たっとるで。
さっきまでブツかってたのは本当やし、互いの本音が聞けてスッキりした。
佐久早君も思わへん?」
コイツのペースに嵌まるとダメだ。
「別に、ムカつくだけだ!もう、お前ら帰ったら?
明日、学校と部活あるんだろう?お前らにサボれる度胸があるなら、話は別だけど。
沙耶は、麻酔が切れるまでしばらくは起きないしな」
やっぱり双子、考える姿も瓜二つ。
「確かに佐久早の言うことは、一理あるな」
「えぇ~サム俺は、帰りたない」
「そないしたら、明日の朝練間に合わんでツム。
仮に理由を言って休んだとしてだ、北さんのブリサードを起こしても残れるか?」
宮治の一言で、二人共氷つく。
「何?そんな怖い先輩とかいるの?」
「古森は知らんから言えねん!北さんはマジで怖い、正論ぶっ掛けられて即ノックダウンや」
『それは、ご愁傷様』と笑う元也とアイツらを見ていた。