第5章 ふわりふわり揺れる思い
聖臣side
手術から目が覚めた沙耶は、麻酔の影響なのか微睡んだ表情をしている。
無理に体を覚醒させるようにしている沙耶の傍ら、宮兄弟は、手を誰が握るかで揉め始める。
何考えているのかよくわらない。
また、沙耶に負担がかかるのは重々承知している俺らは、手さえ握れずにいるのに何だこいつら。
『宮侑、静かに出来ないなら外出ろ!』と言うと、『なんで怒るのか』と元也に制止されるのは、2度目で不機嫌にもなる。
それも沙耶には、お見通しで眠くて堪らないのに俺に微笑んでくれるから、高揚しているのがわかる。
まったく、沙耶に絆されてるな。
お互いに見つめ合っていると、宮侑から痛いほどの視線を感じる。
さっきから何だ?
『お前じゃなくて俺が、握りたいんや。サム替われや!』と片割れにいった言葉は、兄弟に対しても感情的で独占欲の現れだ。
元也もあの時は、唖然としてて宮治も少し動揺していた。
咄嗟に沙耶が、その場を治めてアイツに交代した途端、子供の様に無邪気に笑っていた。
しばらくして、沙耶が眠りにつくと病室を出て缶コーヒーを飲みながら、窓の外を眺めて一息つく。
今になって疲れがどっと出た感じで、倦怠感に襲われる。
それだけ不安だったのか?
それとも、宮侑のあの独占欲が脅威に見えたか?
自問自答していると、声を掛けられる。
「佐久早君、今えぇ?」
今は、あまり相手にしたくはない。
「何だ?要件は?」
冷たくあしらうように放つ声が、低く響く。
自分が思っている以上に、警戒というよりコイツに敵視しているのは、最初から分かりきったことだ。
「そんな警戒せんといてや、まだまだこれからやて」
「だから、何がだ?」
「沙耶の事好きやろ?佐久早君」
藪から棒に振られる。
この間、はっきり釘刺しといたのにこれか。
「沙耶は、ずっと大切にしてきた子…好きだから誰にも渡さない。
それは、元也でもお前らでも同じだ」
「前も思ったけど、はっきり言う佐久早君は、かっこえぇなぁ。
ホンマ…相手にしちゃ強すぎや。
けど…俺も引けんのや、出会ってしまったから愛しくて堪らん。
せやから、治でもあんたらでも同じやで」
こいつ!目が本気で俺を睨みつけてきた。