第5章 ふわりふわり揺れる思い
彼らの献身的な看病もあったおかげで、あの日から徐々に食べれるようになり、最短での体調回復から手術出来るところまで持ってこれた。
その間は、嫌な事もあったし出来なくて辛いなと思っていた事は、何となく聖臣も侑君にはバレていて、それでもそっと寄り添ってくれていた。
2人が感づけば、元也も治君も察して激甘になるのは当然のことで。
あまりそう言う事を言わないでいると、たまに聖臣から小言を言われたが、何とかこの日を迎えられて良かった。
もう起きなきゃ、呼んでいる。
『待って…待って!』
振り向くとまた、瓜二つの私。
『起きるの?また辛い事が起きるよ』
辛い事って?
『まだ、それは秘密…今度は、誰に縋る?元也?それとも治君?』
冷たい両手が、頬に触れる…暗い影のように私覆い尽くす。
『その時が来たら私が、守ってあげるね…』
ニコリと笑った顔は、背筋が凍るほど冷たいものだった。
意識の向こうから、また呼んでいる声が聞こえてくる。
『ほら、みんな呼んでいるよ』と言うと、背中を押され意識が浮上した。
「沙耶!沙耶‼︎」
目を開ければ、心配して覗き込む4人の顔。
「聖臣、元也.…」
「目覚めたか?眠いだったらまだ、寝てていいから」
聖臣が、頭を撫でてくれる傍から、頬を撫でる大きな手に気づき反対の方をみると、安心した侑君と治君がいる。
「ようやくこっち見た!痛いところとかある?」
「侑君、大丈夫…ちょっと眠いかな」
「ツム、ナースコール押して先生呼ばな」
「そうやな、感動の再会の余韻に浸っておりたかったけど、しゃないやんな」
「宮侑、バカ言ってないで早く押せって」
「聖臣!言い方!」
きつい言い方をした聖臣に対して、怒る元也。
いつもの光景を見ているようで、懐かしいと思えてくる。
しばらくして、南條先生と看護婦さん達が病室に入り体調を見ている。
「頑張ったな、経過を見ながら少しずつリハビリを開始したいとこだけど、しばらく安静だな。
沙耶は、手術でかなり体力消耗しているから、お前ら騒がしくして疲れさせるなよ」
『はーい』と返事をする侑君と元也、頷く聖臣と治君。
静かになんて無縁じゃないかな?特に侑君と治君は?
『特に侑と治はな!』と南條先生に言われ、『何でやねん』とツッコミを入れる2人に微笑んだ。