第5章 ふわりふわり揺れる思い
あの日、聖臣を傷つけてしまった事を後悔していたのに、またあの日を繰り返している。
不安に揺れる心が、嫌で堪らない。
「前の私じゃないって、どう言う意味や?
何か変わったんか?
俺は、何も変わってへんと思うとるよ。
確かに今はしんどいと思うで、うまい具合に食べる物も入らんと思う。
せやけど、手術したら普通の生活に戻れるし、サムと一緒に3人で遊びにも行ける。
そしたらずっと手を繋いで歩いて、楽しい事いっぱいしよう!笑顔でいさせたるから…そんな顔せんといてや」
悲しげにそう言う侑君を見上げて、また傷つけたんだと自覚する。
ただ、前みたいに聖臣言った言葉を口に出さなかったのが、せめての救いなのかもしれない。
「私…また笑えるかな?ちょっと、自信ない…」
「えぇよ、自信無くてもえぇから。
俺が、笑わしたるから何も考えでもえぇよ。
沙耶の事、愛しくて堪らん。
やっぱり誰にも渡しとうないねん、好きや・・・ずっと好きや。
その気持ちは、ずっと変わらへんよ」
「記憶が無くても?前みたいな私じゃなくても…ソレ言える?」
怖くて侑君の顔が見れない。
「記憶?そんなもん、また増やしてけばいいやん」
両手で頬を触り目が合えば、にっこりと太陽の様に笑う侑君の笑顔。
「心配する事ないで、楽しい事なら何でも何回でもすればいいし、思い出も蓄積されて沙耶が、笑ってくれれば俺も幸せやしな」
おでこにキスして、苛めっ子のように笑っている。
釣られて笑うと幸せそうにしていた。
「そうや、その笑顔がみたいんや、マジ可愛い!ホンマこのまま持って帰りたいやん」
そう言った先、花瓶を持って戻ってきた治君から、唖然とされまた2人の喧嘩が始まる。
「なんやねん、お前!俺が、おらん間に口説くとかありえへんやろ」
「えぇやん可愛い〜沙耶を一人占めしとって、何が悪いねん。
なぁ、サムさっき沙耶笑ってたんやで、めっちゃ可愛い笑顔、最強の笑顔やんな。
お前には、見せへんけどな」
「なんやてコラ!ツム、いいかげんにしろや。
お前のもんとちゃうやろ?
沙耶、嫌なこと言われてたらいいや!シバイたるからな」
「もう、二人共喧嘩しないで」
笑う声が、病室に響いてちょっと気持ち的にも楽になった。