第5章 ふわりふわり揺れる思い
「食事を無理矢理食べたら、胃がムカムカしてきて全部吐いてしまったの。
丁度、担当の看護婦さんに見つかって、気持ち的に焦りすぎじゃないかって言われたんだけど…。
何か落ち込んじゃって、気分転換に景色が見たくて看護婦さんに無理を言って窓まで連れていってもらったんだ。
でも、看護婦さんも別の患者さんところに行かなきゃいけなくて、ここで待つように言われたんだけど。
外の景色を見ていたら、思いっきり空気を吸いたくなって窓を開けていたら、最悪なタイミングで聖臣が来たの。
風が気持ちが良くて、自分でも無意識に窓から体を乗り出してたみたいで…。
そのせいで、何があったのか問い詰められて…咄嗟に嘘をついてしまって…」
あの時の聖臣は、すごく怒ってて何でそんなに怒っているのか、わからなかった。
「ハァー、沙耶それあかん!俺かて、その状況みたら怒るで」
「えぇ?侑君も怒るの?何で?」
あぁーヤバい!
侑君の顔が、般若に見えてくる…あの時の聖臣と同じ顔だ。
「あっあのーごめんなさい」
咄嗟に謝ると、侑君は、さっきよりも不機嫌になった。
「何に対して、謝っとるの?」
「あーその…」
「分からんなら、教えたるわ!!」
息を呑んで侑君を見ていると、優しく抱きしめられた。
「佐久早君も俺も同じこと思ってたと思う…。
ここ何階やと思っとる?
体乗り出してって、危ないやろうが!
それに、食べれなくても吐いても俺は、怒らん!
寧ろそんなにも追い詰められとるんかと、心配になってもうて堪らん」
「心配?何で?早く良くなって手術したほうがいいし、侑君達も聖臣達も私なんかに時間取られて、迷惑かけているから調度いいじゃない」
抱きしめられた腕が程かれ、肩を掴まれ侑君と目が合う。
いつもの侑君とは、違った真剣な表情で見つめてくる。
「何言っとる?迷惑とか一度でも言ったか?
ホンマに心配なんや…こんなにも体が細くなって、不安なのも痛いのもしんどいのも、俺に隠そうとするからやろ!!
ずっと傍におりたい…けどそんなの無理やん。
だから時間の出来る限り、会い来るんやで」
なんで?そんなにまで怒るのか理解できない。
私は、前とは違うのに。
「私は、前とは違う…こんなの私じゃない」
真っ黒な感情が渦巻き、小さな声でそれを呟いた。