第5章 ふわりふわり揺れる思い
聖臣side
怒りに任せて言い合っているわけではなく、大人としての対応する父さんの姿に共感した。
自分なら、今にも殴りかかりそうな勢いなのに。
「佐久早君のお父さんって、すごいやん!
海斗おじさんに言い合える人って、俺のおかん以外におらんと思ってた。
あの性格やから、昔から敵も多かったって聞いてるし一匹狼やと思っていたけど、真が真っ直ぐやから案外話すると人が集まるタイプやんな。
あんな風に対等に言える人は、滅多におらん」
背後から宮侑から言われ、珍しくキレてなくて驚く。
「お前ついてきたのか?どこから聞いてた?」
「あぁ、沙耶が、心肺停止になった~からかな。
一瞬殴りに行こうかと思ったけど、佐久早君が我慢して耐えとるとこ見てたら思い留まった」
コイツにしては、かなり我慢した方なのかもな。
「沙耶は?」
「病室に戻った、サムと古森君が見とるで」
「戻るぞ!」
「いかんでえぇの?」
「父さん達の話に子供が介入しても、人蹴りされて終わりだ。
それよりも…沙耶の父親が、南條先生なのか?」
「話聞く分には、そうなんやな!あんだけおばさんに四六時中くっついてたら、昔なんか合ったぐらいは思うやろ」
それもそうだ。
毎日、祈るようにおばさんに触れているのを何回も見かけことがあった。
だから、あの人にとっておばさんは、特別な人だとは思ってはいたけど、沙耶の父親なんて思わなかった。
「沙耶は、この事気づいていると思うか?」
「どうやろうな、俺達と同じ事考えてたとしても父親って思う?
昔、母親と先生が恋仲だったとかしか思うわんやろ!」
「そうだな…お前、くれぐれもこの事沙耶に話すなよ」
溜息と不安が過ぎる、もし今言っていた先生の気持ちを知れば、最悪な展開になるかもしれない。
なぜだかそう思えて仕方なかった。
「そうやな、自分よりも母親の方生かすとか、それ言った奴が父親だったなんて知ったら気狂うで」
宮侑も深い溜息を漏らし、この場を離れた。
病室の前から、宮治と元也の笑い声が聞こえる。
扉を開ければ沙耶が、目覚めるところだった。