第5章 ふわりふわり揺れる思い
聖臣side
あれから3時間が経過した。
手術室のランプが消えると、中から南條先生が出てくる。
「手術は、成功した!時期に沙耶も目覚める」
手術が成功した事に俺も安堵し、宮兄弟や元也は嬉しそうにしていた。
しかし南條先生は、浮かない顔をしている。
声をかけようとすると、父さんが先に話しかけきてその場を二人して離れていった。
違和感を感じ、すぐに父さん達を追いかける。
「海斗、えらく時間がかかったな」
「そうでもないさ、俺は、整形外科医じゃないから慎重にやってただけだ」
「整形外科医も立ち会ったはずだろう?手術中に何かあったのか?」
沈黙が、二人を包み話しかけるどころではない。
「やっぱり、和臣には隠し切れないか」
溜息が漏れる先生に対し、苦笑いをする父さんは、南條先生の肩を叩いて話始めるのを待っている。
「手術中、一時的な心肺停止になったが、すぐに持ち直した。
手術前沙耶の状態は、悪くはなかった…原因は、恐らく脳の炎症だと思っている。
…このまま脳死になったら、沙耶の臓器は遥に移植できるのにって一瞬でも思ったよ。
最悪だ!医師として最低だ!遥が聞いていたら、殴られるな」
「そうだな、遥ちゃんなら平手じゃすまないだろうな。
お前、焦っているのか?
遥ちゃんの状態は、正直俺からみても最悪な状態だ。
けどな…お前が諦めたら終わりなんだぞ。
ソレ、わかってて言ってるんだよな?」
何だよ…ソレ?
脳死?移植?ふざけんな!
下を向いた先生の表情が、見えない。
殴りたい気持ちを抑えながら、拳が震える。
「あはは、和臣は…痛いとこついてくるな。
諦めてない!諦めるわけがない!俺が…助けなきゃ誰がアイツを助けるんだよ。
俺じゃなきゃ…なんのためにアイツを捨ててまで、医師になったのかわからない。
俺は…遥を助けるためなら、悪魔に魂を売っていいと思っている…けど沙耶は、俺と遥の子だ。
それでも、どっちを助けるかって聞かれたら迷わず、俺は遥を助ける!」
互いに視線が、ぶつかり睨み合っている。
「お前の真っ直ぐなとこは、良いところだけど今の発言は、聞かなかった事にするよ。
両方助ける方法考えろ!遥ちゃんを捨ててまで医師になったのなら、尚更だ」
こんなに荒々しい父の姿は、初めてだった。