第5章 ふわりふわり揺れる思い
聖臣side
まだ微睡んだ夢見の中にいるようで、目を閉じたり開けたりしている。
「聖臣?」
「何?まだ寝ぼけているの?」
「えッ?帰ったと思っていたから、ちょっと嬉しくて」
柔らかい笑顔を向けてくれるが、少し辛さが残っているように感じる。
「熱あるのに帰れない。お前、そういう時程寂しくて不安になるだろう?
それに…俺のせいでもあるから…」
「そんなことないよ…外に出たのだって私が、お願いしたようなもんだし侑君も治君も悪くないんだよ。
元也だって色々話を聞いてくれて、その…いつものようにね!聞いてくれただけだよ」
何を隠しているのかは、沙耶の表情をみればバレバレだ。
こうも露骨にされると意地悪したくなる。
「ふ~ん、で!元也と何を話した?」
「えっっと…侑君と治君が来てくれた事と、学校の事とか?かな…」
「それで?元也は何て?」
「あぁ~うちの学校と違うね~とか?言ってたかな」
やましい事があると、絶対目線を外してくる。
「稲荷崎と井闥山学院の違いって、俺にも分かるように説明してよ」
「……………」
沈黙が続くと下を向いて、困り果てた表情でいる。
「沙耶…何かあった?」
なるべく声のトーンを下げないように、優しく言ってみる。
「あのね、私…わたし…」
「?」
泣きそうな困った顔で、見上げてくる。
ウルウルとした瞳と紅色した頬にドキッとしつつ、平然とした態度でいるのは辛い。
そうゆう顔するから、寄ってくるんだよ。
今までどんだけ害虫駆除を元也とやってきたことか、お前は知らないだろうな。
「言って!何言われた?」
さっきより強い口調で話すと沙耶の体が、ビクッとなる。
イライラしてくる。
何も言わない沙耶にも、元也や宮兄弟にも腹がたつ。
『聖臣』と縋るように呼ぶ声は、いつになく不安な瞳で見つめてきて、不謹慎だけど俺にだけに縋ってと欲求していた。
「はぁー怒ってないから、宮兄弟と元也に言われた事って俺が朝に言ったことと同じ?」
吃驚して口を噤むが、何も言わずにいるとゆっくりコクリと頷きまた、視線を外した。
そして、ポツリと小さく呟やいた一言に激怒した。