第4章 宮兄弟の愛し方
侑side
「佐久早君なら、ある程度調べてくると思っていたよ」
おじさんは、不敵な笑みを浮かべながら何かを試すように見ている。
「外傷性脳損傷って何?」
「侑や治には難しいか?そうだな、外傷性脳損傷は、事故の影響により頭に強い衝撃が加わると、脳が傷ついたり、出血などを起こしている状態だ。
事故当時の記憶が欠落したりする記憶障害もある、人によっては、脳のはたらきが障害され、半身の麻痺や感覚障害などの症状が起こる場合もある。
ほかに失語症、半側空間無視などのいわゆる高次脳機能障害がよくみられるな」
あまりにも淡々と説明するおじさんは、やっぱり医師だ。
沙耶の身に、これから起きる現実が過酷にみえた。
「じゃ、何かのきっかけで思いだしたら、沙耶は…沙耶は、きっと泣くやん!
バレーできんこともそんな障害ばっかりでてきたら、心が壊れるだけや…なんでや!
おじさん医者なんやろ?どうして、治してやるっていってくれんのや!!」
静寂に包まれた場所に、声を張り上げおじさんの白衣を掴む。
「治す?俺は脳外科じゃない、それに医者は、万能でもなければ神様でもない。
あの事故で命があって、目覚めただけてもラッキーだったってことだ」
なんなんや!まるで他人事や。
「このクソったれ!」
おじさんを殴ろうとすると、サムが間一髪で止めにはいる。
「待てや、落ち着けてツム!まだ決まったわけじゃない」
「離せ!サム、納得できんねん」
羽交い締めにされている傍で、佐久早君がおじさんを殴っていた。
「あんたは、医者のフリして全てを諦めてるような言い方しかしていない。
今は、あんたしか…沙耶もおばさんも助けてやれないんだ」
「佐久早君は、強いね。だからか…」
悲しげに言うおじさんは、俺達の前に塞がる。
「現状は、厳しいよ。高熱がでたのもなんらかの脳への影響はある。
明日からの検査でそれも分かる…結果は、後日お前達にも伝える。
遥のところに行くからこの話は終わり、お前らも早く帰るように」
去り際におじさんが、佐久早君近寄って何かを話をしていたが、沙耶の事が気になってそれすら気にしないでいた。
「ツム、俺かてあんな事言われて納得なんてしてない」
顔を歪めるサムを見て、同じ顔しとるんやろうと思えた。