第4章 宮兄弟の愛し方
侑side
「事故の時に、頭から血流してたって言ってた事と関係ある?」
「結論から言うとそうだ…沙耶は事故の影響で、中々目を覚ますことが出来なかった。
目を覚ました沙耶に、違和感はなかったか?」
おじさんから言われて思い当たる節は、沙耶の中でバレーの事について一切の記憶がなかったことや。
「沙耶…バレーをやっていた事忘れとる…夏のI.Hで俺達と会った事も全て…。
沙耶は、足や腕を手術してもホンマにバレー出来へんの?」
おじさんは、溜息をつきタバコに吹きかけた火が、静寂に漂う煙を見つめている。
「無理だ…手術は、成功せるがバレー選手としての現実は厳しい。
通常の生活を送らせてやるだけで精一杯だろうな」
「何でやねん!リハビリしたら『お前バカか?』」
佐久早君が、話を割って入ってくる。
「前にも南條先生が、話してたこと忘れたのか?」
言ってたことって、頭から血を流した事と記憶障害や運動障害を起こすこと!先生と佐久早君の顔を見ながら、ゴクリと唾を飲み込む。
「記憶障害や運動障害の話の事か?」
佐久早君は、やれやれとした感じでおじさんは、「そうだ」と言ってきた。
「第一段階として目覚めた沙耶の今の状態は、五体満足とはいかない。
事故の代償は、侑が言った通りバレー選手としての記憶と事故の記憶の抹消だ。
ただ、何かのきっかけでバレーをしていた、選手だったと思い出した時には沙耶の状況は一変する。
その事は、この間佐久早君にも伝えたよ」
状況が一変するって何だ?
「先生、思い出した事で状況が一変するって、事故のせいでバレーが出来ないって分かってしまったら沙耶がどうにかなるって事なのか?」
サムが、重い口調で問いかける。
俺やったら…考えられん!気が狂いそうや。
「沙耶は、無意識に忘れようとしてないのか?」
複雑な面持ちで佐久早君は、おじさんに問いかける。
「それもあり得るな。コレばかりは、沙耶自身どうなるか、本人しかわらないからな。
心が潰ればカウンセリングが必要になる、だからアイツにカウンセラーを頼んである」
「外傷性脳損傷の影響は?」
外傷性脳損傷?なんか聞いた事あるような…佐久早君の質問が分からなくてモヤモヤしていた。