第3章 目覚める瞳
聖臣side
朝の病院は、静寂に包まれている。
ちょうど、コールセンターに沙耶の担当看護婦と目が合い、お辞儀をしてから中に入る。
昨日、南條先生から病室が変わったと聞いて、その病室に向かう。
向かった病室を前に思わず、『マジか!』と声に出してしまった。
特別室!!
個別病棟だと聞いていたけど、まさかの特別室。
政府や有名人御用達の病室じゃん。
アイツ何者?
たかがフリーランスの医師に、こんな権限があるのか?
扉を小さく叩いて中に入ると、花の匂いがした。
まだ、スヤスヤと眠っている沙耶をみると、昨日よりも顔色が良さそうだ。
「沙耶…おはよう」
頬を優しく触ると、身じろぐ姿に頬が緩む。
今まで眠っていた沙耶しか見てなかったせいで、少し安心したのは気のせいじゃない。
「沙耶、朝だ」と言いながら、カーテンを引くと、一面に住んでいる街並みが一望出来る部屋だった。
目を見張っていると、ずっと聞きたかった声が聞こえた。
「きよ・・・お・・・み?」
舌足らずな声は、寝起きの沙耶の声だ。
「寝ぼけてる?昨日、朝来るって言っただろう?」
「う~んん、聖臣…手…握って?」
迷わず手を握ると、開かれる瞳…今だけ俺だけが知る沙耶の極上笑顔。
「聖臣、おはよう!ランニング行ってたの?」
沙耶に見惚れて思わず返事をする前に、キスをした。
「えッ、待って!!」
戸惑う瞳も可愛くて仕方がない。
「待てない…ずっと待ってたから無理」
「ちょ!ちょっと待って何?なんでキス!!」
「何回もしてるし」
「何回もって、私知らないよ」
「うん、沙耶が、寝てる時にしてたし、おでこも頬もココもした」
ココも!と人差し指を唇に当てれば、真っ赤になって目線を逸らそうとする。
こっちだって恥ずかしいんだけど。
「そんなのすっ好きな子にしないと、ダメなんだから」
少し動揺している沙耶には、ハッキリ言った方がいいな。
「うん?俺は、沙耶の事が好きだから、そういう事してもいいわけだ」
「好きには、色々あるよ…聖臣の好きって妹とか友達、家族愛?とか?」
妹、友達、家族かー、色々な愛のカタチがあるけど、俺の『好き』は、それらとは違う。