第3章 目覚める瞳
聖臣side
手を握ったまま眠りに落ちた沙耶を見て、少しほっとする。
あのまま…ずっと眠り続けて目覚めないと思っていた。
目覚めた時のあの瞬間は、嬉しくて手が震えた。
沙耶自身、自分の名前も俺達の事もはっきりと覚えててよかった。
自分の事も分からないようじゃ、俺達の事も分かるわけないだろうし、その点だけは掬いだな。
これから、本格的に動くことになる。
まずは、体力の回復そして、手術後からのリハビリまで長いスパンになるだろう。
無理は、正直して欲しくはない。
けど、傍にいないんじゃあんまり変わらないとも思える。
それに関しては、沙耶不足で重症だな。
眠っている沙耶の頬を撫でながら、また今日みたいに笑ってくれればいい。
明日は、兵庫からアイツらが来る。
「なんで、アイツらわざわざ兵庫から来るんだよ。
マジでうぜぇ」
あぁ~俺の方が、だせぇかも。
こんなにも小さな男かと思うと、少し嫌気がさす。
幸いに、小さな声で叫んだため誰も見ていないし、聞いてないことに少し安堵した。
「沙耶・・・明日も来るから。
良い夢が、見れるといいな」
『おやすみ…』と耳元で囁いて、いつものように額にキスをしてから帰るのが日課。
ふと、さっき沙耶に言った言葉を思い出す。
『恐くないよ』か…自分に向けて言った言葉でもある。
本当は、俺の方は離れたくなくて、またずっと眠り続けるんじゃないかと不安になる。
「朝来るよ、ランニングコース変えたから。
いつものように、笑顔でおはようって言えよ」
最後に唇にキスをして「また、明日・・・」と伝えてその場を離れた。
帰り際、南條先生とすれ違う。
「聖臣君、これで沙耶が、目覚めた。
この間の話覚えているか?
俺は、遥のためにも兵庫に移す。
それには、あの子が必要だ」
「あんたそうであっても、沙耶がいいなんて言わないし、俺がさせない」
「君も頑固だね…明日から、少しずつ検査をしていく事になる。
特に脳に関しては、MRとCTの両方、あとカウンセリングも必要になる」
「カウンセリング?」
起きた時の沙耶の状況を思い出す。
「…事故当時の記憶がない!」
そうだと言わんばかりに、先生も頷いた。