第1章 呼吸
聖臣side
沙耶と別れた後なんだか胸騒ぎがした。
沙耶にLINEをしても既読がつかず、電話しても繋がらない。
居てもたってもいられなくなり、元也に家の電話から連絡をする。
「元也、俺だけど…沙耶と連絡とれるか?」
『うん?沙耶に何かようなのか?』
「そうじゃないけど…」
歯切れの悪い言い方になってしまう。
『今日、沙耶ママとお寿司とか言ってなかったか?
そのうちかけてくる思うけど?』
「あぁ、それは知っている。今日その話を嬉しそうにしていたからな。
でも、もうこんな時間なのに、沙耶も叔母さんも帰って来てない」
家の時計をチラッと見れば、もう11時を回っている。
携帯は、さっきからコールをしたまま。
こんなにかけても気づかないなんておかしい。
『そうだよな、遅いよなぁ。俺も沙耶にLINEしてみたけど、既読にならない。
沙耶ママのLINE知ってるよな?入れてみたらどう?』
「それもやった、叔母さんからも連絡がない」
家を開ける時間が多い沙耶の母親とは、常に連絡が入るようになっている。
親同士が仲が良いだけではなく、自分の事を信頼してくれているからこそ、彼女の傍にいられるんだと思っていた。
もう一度、沙耶にかけると、数コール後に『もしもし…』と沙耶とは違う声が聞こえてくる。
「元也、沙耶と繋がった、ちょっと待て!」
胸騒ぎがして、元也と繋がったまま携帯をスピーカーにして、その女性に話しかけた。
「もしもし、あんた誰だ?沙耶…白城沙耶の携帯をなぜ、持っている?」
しばしの沈黙のあと、その女性から思いがけない言葉を耳にする。
一瞬、時が止まって呼吸の仕方さえもわからない程、震える手を懸命に抑え沙耶の居場所をメモをした。
その女性と会話が終わり、壁に雪崩れこむ。
『聖臣?聖臣!聞いてる?何?何かあった?
おい!返事しろ!!聖臣!!』
まだ、元也と繋がったままだった事を思い出し、一呼吸を入れる。
「元也…沙耶の携帯から、警察の人が出た。
沙耶と叔母さんが、事故にあって…病院に運ばれた…」
静けさの中、自分の鼓動だけが大きく響いた。