第2章 最悪な彼奴ら
聖臣も元也も南條先生に敵意を向けているのが伝わる。
特に、聖臣の言い方が強く感じられて、たぶん今頃眉間に皺が寄って、エライ事になってそう。
侑君と治君は、少し対照的?
侑君は、何としても兵庫に来させようと考えているけど、治君は逆に冷静に周りを見てるみたい。
根本的な気持ちは、治君も一緒で兵庫に来て欲しいだろうな。
先生の言った事に対して、何もかも諦めてはいない様子。
先生に喰ってかかろうとしたのもその性なのかな。
それに、いつもはあまり多く語らない聖臣が、饒舌に語っている姿が意外だった。
元也と共通する事だけど、心配症が拍車をかけている気もする。
私の気持ちを考えて、不安にさせないようにしてくれる聖臣には、すごく嬉しかった。
話が進むに連れて、互い同士言い争いになった時の聖臣の言葉が、胸に刺さる。
「早く起きろよ!お前が起きないから周りが好き勝手に叫いでる。
最悪だ、本当に最悪。
夜は眠れない、朝は起きれない、悪循環なんだよ。
沙耶目覚めろ!
例えバレーが出来なくても沙耶は、沙耶だ。
周りに好き勝手言わすんじゃねぇよ!」
好き勝手に言わすなか…痛烈だね。
いつも聖臣と元也は一緒だった。
歳を重ねる事に、身長は私よりも高くなって、繋いだ手は大きくいつの間にか守られる側になっていた。
特に聖臣は、だんだん知らない男の子になっている気がして、どう接していいのかわからない時もあった。
そんな時は、元也が言った事を思い出す。
『聖臣は、基本ネガティブだから、気に触る言葉や行動しても気にしないで!』って、その時は、貶しているのか慰めているのかわからず、笑ってしまった。
言いたい事をハッキリと言える聖臣は、真が強い人。
私の事、弱くないって…でもね、私が、目覚めても何もないんだよ。
バレーが出来なくて、お母さんの事も何もかも失っているかもしれない。
私は、何で生きているんだろう?
まだ心臓は、ドクドクを音をたてて生きようとするんだろう?
なんで?バレーが出来なくなっちゃうだろう?
なんで?辛いよ。
大好きなのに…まだやりたいのに…。
なんで私だけ…置いて行かれる。
周りは、足早に進んで私は、足踏みしている。
そうじゃない、足踏みなんてものじゃない。
暗闇に飲み込まれていくみたいだ。