第2章 最悪な彼奴ら
聖臣side
眠っている沙耶に、自分の思いを伝えられたと思う。
もう、この事を聞いているならわかるだろう?
俺は、怒っているし不安だしイライラしている。
そう言う時ほど沙耶は、俺の手を離れていったことなんてない。
「あぁ~佐久早さ、俺達もいろいろおじさんに聞かされてここに来とるんやで。
俺は、信じとる!目覚めたら、開口一番にバレーしたいっで言うんや。
リハビリだって毎日付き合うし、最初から出来なくてもいいんや。
あきらめんければ、何でも出来るし少なくとも沙耶はそう言う子やで。
努力家で意外に負けず嫌いやし、よくツムと張り合とったわ。
南條先生…沙耶は弱わない。
だから、早く取り戻すためにはその偉い先生の所にいた方がいいちゃうん?」
宮治から投げかける言葉は、沙耶の事を考えての言葉だ。
アイツの言う通り、直向きにバレーに向かって努力を惜しまない。
出来ないって他の奴が言っても、出来るまでやっていた。
練習量は、俺や元也とも引けを取らないくらいだ。
その直向きな姿は、綺麗で強くて眩しい存在。
ただ、沙耶の最悪な状態を考えるなら…京都の病院で治療を受ける選択が正しい。
分っていると一方的に頭の中で何度も呟くが、頭では理解できても頷くことがでないんだろうか。
元也が、南條先生に険しい目で問いかける。
「仮に京都に行って、沙耶はどこまで回復しますか?
沙耶が目覚めてからじゃないと状態なんてわらないのは、従順承知しています。
沙耶は、決して弱くはないけど…。
特にバレーに関しては…出来ないってわかった時の精神状態は、想像を絶します。
俺ならこの状況には、耐えられない…。
だからこそ俺も聖臣も傍で支えてやりたい。
そうだろう?聖臣」
元也も俺と同じ気持ちだ。
ずっと幼い頃から一緒にいたから、宮兄弟よりも…誰よりも沙耶の事を理解しているつもりだ。
「元也の言う通りだ。沙耶を一番に理解し支えてやれるのは俺達だ。
幼い頃から、一緒にバレーも学校もずっと傍に居たのは、俺だ。
宮兄弟とは時間も距離も違う、だからこそわかる事が多い。
兵庫に行く決断は、まだ早すぎる」
決断は、まだ早いと心に言い聞かせていた。