第2章 最悪な彼奴ら
『忘れちゃえばいい…』
えっ?と思った瞬間色々な映像が映し出されている。
初めてバレーボールを触った日。
聖臣と元也とバレーを習った日。
兵庫に帰った時に、侑君と治君とバレーを暗くなるまでやった日。
チームメイトと楽しかった事も試合で、勝って嬉しい事も負けて悔しい思いもした日も、バレー一色の日々だったな。
『忘れちゃえばいいよ。何もなかった事にしよう…』
そう言われてみた先は、私と瓜二つの姿。
忘れるって?なかった事って?
『バレーなんて最初からやっていない。
バレーとは無縁…。
だから、今までの事を忘れるの。
大丈夫、聖臣も言ってたでしょう?
バレーが出来ても出来なくても沙耶は、沙耶だって。
あの2人なら何があっても守ってくれるから、不安になんてならないでしょう?』
ニッコリ笑う私は、黒く不穏な影のようだった。
忘れる…。
『そう、忘れるの…』
忘れたい、何もかも。
そう思った瞬間、全ての映像は、パリンと音をたてて崩れていった。
涙を流す私を抱きしめて、帰ろうと呟いた。