第2章 最悪な彼奴ら
聖臣side
今まで黙って聞いていた双子の片割れからは、意外な言葉だった。
「忘れるとかあかん…なんで、そないな事言う?
沙耶が事故にあって心身共に辛い時期やから、支えてやって言うたやん。
例え、事故の後遺症でバレーができんくなっても、リハビリを頑張れば奇跡が起きるかもしれんって!…ツムと俺に言うたやん。
沙耶は、今も一人で頑張っとる。
なんで、さっきから最悪な事ばっかり言うんや。
佐久早やないけど、いいかげん俺かてもう黙っとれん」
室内は、静かな心音だけが響いている。
沙耶は、まだ眠り続けたままピッピッピッと一定の心音が奏でている。
溜息を幾度も吐いた。
自分の不甲斐なさに嫌気もした。
何もしてやれず毎日会いに来ても笑いもしない、いつものようにしゃべってはくれない…ただ…綺麗な人形を見てるだけだ。
沙耶の右手を掴むと、沙耶にも怒りがましてくる。
お門違いだってわかっていても止められない。
「早く起きろよ!お前が起きないから周りが好き勝手に叫いでる。
最悪だ、本当に最悪。
夜は眠れない、朝は起きれない、悪循環なんだよ。
沙耶目覚めろ!
例えバレーが出来なくても沙耶は、沙耶だ。
周りに好き勝手言わすんじゃねぇよ!」
沙耶に今まで向けたことのない怒りの感情。
元也でさえ、黙って見守ってただ聞いているだけだ。
「南條先生…医師として可能性があることを言うのは、仕方ない。
でも、例えあんたの言う通り沙耶に記憶がなくても俺は、沙耶をここに居させる」
「そうか…お前の意見は正しいよ。
が、今までと出来た事も出来なくなるましてや、記憶のない人を支えるのは容易じゃない。
それをわかって言っているのか?」
頭では理解しようとしているけど、実際のところ沙耶がどうなってしまうのか想像できない。
それでも…
「わかっている…それでも、沙耶をここに居ることで、安心させてやれるなら一緒にいる方がいい。
一から関係を築くより、初めからあった繋がりのほうが強いし、何かのきっかけで思い出すこともある。
それが、沙耶の心を守ってくれると思う」
俺が、沙耶を傍で守りたい。