第7章 文化祭② *
聖臣said
学校に戻れば、元也から家庭科室の使用許可を貰ったと木崎経由で連絡が入る。
やはり直接の連絡は無しか…。
LINEを眺めては、ふと窓から見える寒空に溜息が漏れる。
渡り廊下を渡り別棟に行くと、さすが進学校なのもあって充実した設備が整っている。
沙耶は、キョロキョロと校内を目移りしながら、買った食材で考案したメニューの題材を俺にいくつか提案してきた。
そこら辺は苦手だからと、沙耶の好きなように任せてみる。
沙耶のことだから、誰でも好きそうな物とか流行りものとか、沙耶なりのセンスでなんとかするだろう。
「ねぇ、聖臣、甘さ加減ってどうしたらいい?」
「そうだな、俺はどっちかと言えば、しつこい甘さは辞めて欲しい」
「そっか、男の子は、あんまり甘いとはダメだよね」
う〜んと悩みながらも素早く準備をしていく沙耶は、俺のために作ってくる時と同じく真剣だ。
出来上がったホットケーキに、生クリームに手を伸ばすもソレを辞めて、どれにしたらいいか迷っているみたいだ。
数秒迷った挙句、ブルーベリーかレモンに手が伸びる。
「なぁ…沙耶、コレにブルーベリーかけて、レモンはフロートに入れたらどう?」
そう言いながら、手元にあったソーダー炭酸水にハチミツを入れ、レモンを搾った汁を混ぜれば甘酸っぱいフロートが出来上がり。
『うん』と顎で飲めと沙耶に促して見れば、ニコニコした顔で飲んでんくれる。
「甘酸っぱくて美味しいね。スッキリした味だから、ホットケーキと相性いいかも」
笑顔で何度も美味しいと言ってくる沙耶は、可愛いと思える。
家ならそのまま唇に触れて、甘さをより実感したいところだが、学校じゃ無理だな。
ざわざわと周りが騒めいたところで、気持ちがスッーと落ち着いていく。
いくつか考案しクラスメート達が、教室にいる奴らに認めさせると勢いよく息巻くと木崎を筆頭に出て行った。
いつの間にか、沙耶と二人きり。
最後の仕上げとばかり、時間も忘れて没頭する沙耶も楽しそうに作っている。
終始ご機嫌な沙耶の出来栄えは、いつだったか姉が見ていたカフェ雑誌に掲載するような、オシャレなものに仕上り大満足だ。