第7章 文化祭② *
結衣ちゃんと何人かの男女が組になって、和気合い合いと歩いている後方に、私と聖臣が後に続く。
教室を出た後も手は、今だ握られたままだ。
クラスメイト達もその事には、何も触れてこない。
『いつもの事じゃんねぇ~』と終始ニヤ顔で、結衣ちゃんに言われたのは少し困惑する。
『いつもの事⁉︎』って、学校でもこんな感じだったっけ?
チラリと聖臣の横顔を覗くと、教室を出た時の少し膨れ面な顔は変わらない。
何がそんなに気に食わないのか、少し気になるところだけど。
家ならともかく、クラスの子達のいる前でずっと手を握られているのは、聖臣的に大丈夫なのだろうか?
「何?そんなに難しく考え込んでんの?」
「えっ!あぁ…何か…うん…」
「だから何?沙耶まで宙ぶらりんな態度やめろって」
「宙ぶらりん⁈もしかして元也の事言ってるの?」
聖臣と繋いだ手を勢いよく離して、睨みつける。
私の行動に吃驚していたけど、すぐに不服そうにこちらを見てくる。
「それ以外誰がいんの?」
「さっきの事は、元也は何も悪くないし、寧ろ私の方がいい加減だと思うよ」
「はぁ?意味わかんねぇ…お前は、悪くない。
何も言わないアイツにイラつくし、第一あの態度がムカつく」
聖臣が、イラつくと眉間にシワが寄って、悪態つくのも酷くなる。
いつもなら『そんな顔しないで』って言うけど、どうにもソレを言ったからって機嫌が良くなる訳でもなさそうだ。
「はぁー沙耶までそんな顔するな」
えッ?と思った瞬間、聖臣の顔を至近距離にいた。
握られていない左手で頬を撫でられ、さっきまでとは違い心配している様子も窺えるし、少し複雑な表情にも見える。
そんな顔って、私どんな顔してたのかな?
「気づいてないのか?お前なんか泣きそうな顔してる…俺がそうさせてるのか…」
「…そんな事ないよ、ごめん何か上手く言えない…」
何を言ってもダメな気がして、ちゃんとしようって思ってたのにいざとなるとウジウジしている。
「アイツら先に行ったな…今は文化祭のことだけ考えてろよ。
甘いお菓子とか沙耶作るの好きだろう?
甘くないものなら試食するから、好きな材料選べばいい」
「…そうだね」
話題が外れてちょっとホッとしている。
その聖臣のちょっとした気遣いや言動が、私を甘やかしてくれていた。