第7章 文化祭② *
「沙耶」
動けずにいた私に声をかけてきたのは、元也だった。
「こっちおいで…教室の内装とか決めるみたいだからさぁ…沙耶そう言うの好きだろう?
だから…俺と一緒にやらないか?」
申し訳なさそうに手を差し伸べる元也の手を取っていいのかわからず、自然と聖臣の姿を探してしまう。
聖臣は、結衣ちゃんやクラスの子達と価格の事や予算を話合っていて、こちらを見ていない。
「…やっぱり沙耶は、……の事ばかり探すんだな」
「えっ!何か言った?」
元也の呟いた言葉が聞き取れない。
「…何でもないよ、ホントに沙耶ってさぁ、〜そう言うとこ鈍感だからほっとけないんだよ」
ニッコリと笑う元也は、いつもの優しい元也の笑顔で少しホッとする。
聖臣も結衣ちゃんと忙しそうなら、自分でも出来る事をすれば良いのかもしれない。
自分に言い聞かせるように、一歩踏み出そうとすると後ろから腕を掴まれる。
「沙耶!」
自分の名前を呼ぶ声は、振り向かなくても分かってしまう。
「沙耶どこに行く?俺と買い出しに行くぞ!」
「えっ!待って、元也が教室の内装しようって言われたんだけど…」
「あ〜そんなの他の奴がするから、メニュー決めるのが先決だし…それに木崎がうるさいだよ。
このままだとアイツの好みばっかで、予算オーバーどころか赤字真っしぐらだ」
溜息を吐いては、友達と楽しそうに笑っている結衣ちゃんに呆れつつ、その輪の中に押し込もうとする。
それに気づいた結衣ちゃんが、手を振ってこっちにくるよう手招きしている。
「沙耶〜料理得意だもんね。
もっと良い案期待してるから一緒に行こう!ほら、元也も来なよ」
笑顔で元也にも誘うが、聖臣が少し冷めた目で元也を見ている。
「元也~コレどうする?」
クラスの男子が、元也に内装の事で呼ばれているみたいだ。
「元也、呼ばれてぞ!お前内装の方仕切れ、どっちもコストかかるようじゃ、どの道ヤバイしな。
俺らは、買い出しに行くから」
強引に元也から引き離し手を強く握られてたかと思うと、足早に教室を離れた。