第7章 文化祭② *
手を繋いで体育館に戻れば、飯綱先輩が仁王立ちで構えていた。
「遅い!!」
ヒィッーーー!!!背筋がピーンと立つよな圧迫感。
さすが、次期主将と言われるだけあり貫禄がある。
「すいませんでした」
先に頭を下げた聖臣と同じように自分も下げて、先輩の様子を窺う。
それでも、聖臣は手を離すことはしない。
あぁ~言われちゃうよね、コレ!
「お前らな~それで反省してるのかよ?
お手て繋いで仲良くするのはいいが、古森はどうした」
「あっそれは…」
先輩に説明しようとすると、聖臣がまた庇うように話を進める。
「古森は、後で来ます。話は俺の方は、しました…ただアイツからは、何も聞いてません」
「なんだソレ?一方的に宣言でもしてきたって面だよな?
そんなんで交流試合は、大丈夫なのか?」
「それは、なんとも…アイツ次第だと思います。
それより先輩、トス上げてもらえませんか?」
「トス?話終わってないんだけどなぁ。
まぁ、おいおい聞くとして、白城に見せたいんだろう?」
飯綱先輩がニヤニヤしながら、コートに入っていく。
それを追うように聖臣もコート内に入ろうとするから、一瞬戸惑う。
私…入ってもいいのかな…。
アレ?足が竦む。
何?この感覚なんだか変だ。
「沙耶、大丈夫か?」
硬直している背中を摩って、両手を握り締めてくれる。
「怖くないから、コートの中に入っていいよ」
いつもより優しい物言いをして、コートまで誘導してくれる。
「白城、俺の横に来な、ここからの方が佐久早の動きがよく見えるぞ」
先輩に言われるまま横に立つと、聖臣から先輩へアイコンタクトをとる。
聖臣は、少し離れたところから助走をつけて、ネット側までかけてくる。
大きな踏み込みの足音と、先輩が放ったボールがスローモーションに見えた。
ネットを超えるほどのジャンプに一瞬息を飲む。
勢いを増すボールは、聖臣の手に吸い込まれるように誘導された。
それと同時に、流れるような聖臣のフォームはとても綺麗でキラキラと輝いて見える。
打ちつけた音と共にボールは瞬く間に、白い白線へとギリギリに降下していく。
不思議と今まで思っていた恐怖は全くなく、決まったことの高揚感と興奮が湧き上がる。
不思議と懐かしいと感じるとともに、嬉しさでいっぱいになった。