第7章 文化祭② *
「聖臣は、何でそんなに悲しそうに言うの?」
「………」
「聖臣…?」
黙って見つめてくる聖臣の頬に触れると、すごく冷たい。
「聖臣冷たいから、中に入ろう?」
強引に聖臣の手を引っ張って歩こうとすると、後から抱きしめられる。
「ごめん…沙耶も体冷たくなってる。
飯綱先輩にでも呼びに行って来いとか、言われたんだろう?」
「うん…二人を呼んできてって言われたけど、元也の事ちゃんと分かってあげられなくて。
もっと考えて言えばよかったかな…そしたらあんな顔させなかったのに…」
「元也の事心配?」
「うん…何か様子が変だし、心配だよ」
ふわりと肩に癖のある聖臣の髪が蹲る。
猛獣が大人しく甘えているみたいで、くすぐったい。
「沙耶、俺を…暖めてよ…」
いつになく弱弱しい。
聖臣は、元也は本音を隠してるって言ってたけど、その意味は正直分からない。
けど、聖臣の強さも弱さも私だけに見せてくれる本音は、私を優越感に浸される。
抱きしめられた腕をギュッと掴んで摺り寄せる。
「はぁー情けない。今のナシ!!」
「なんで?」
「沙耶には、弱音吐きたくねぇ。カッコ悪いだろう?
俺は、自分が甘えるより沙耶に甘えて欲しいから」
「十分甘えてるよ」
「そんなんで満足してないで、もっと甘えろよ」
後首にチュッっとキスをされて、いつもの調子に戻ってる。
半分揶揄って、それでいて優しい瞳で見てくる。
「もう~聖臣くすぐったいよ~」
「クスクス、なんですごく甘い匂いしかしないから、今すぐでも食べたくなる」
「猛獣!!」
笑いながら触れるだけのキスをする。
離れていく唇が名残惜しくて、咄嗟にギュッと聖臣の袖を引張ってしまう。
「寂しい?」
見透かせれて真っ赤になっちゃうけど、それは本音。
「離れちゃダメ」
「~っあ〜ったく無自覚…」
溜息をついたと思ったら、さっきとは違う余裕のないキス。
こじ開けられた唇に絡まる舌と吐息にクラクラする。
「んんっ・・・」
「沙耶ここ学校、続きは家で」
離された唇を追いかけたくても、全身が痺れるような感覚に聖臣へ傾れ込む。
上から溜息が漏れると余裕のない聖臣の顔が伺える。
我慢してるんだ。
『あぁ~余裕ねぇ~』と呟いた声に笑ってしまった。