第7章 文化祭② *
走って彼らに近づいていくと、先に気づいたのは元也の方。
いつもの朗らかな笑顔は無く、苦痛と困惑が見え隠れする。
私が、元也にそんな顔させてるんだ。
振り返った聖臣と目が合うと、心配そうに私の方まで駆けて促す。
「そんなに走るな!」
「だってなんか、元也と聖臣揉めてるみたいだったから…心配になって」
聖臣怒ってる?元也もなんであんな顔してるの?やだ、どうしよう…泣きそう…。
先に切り出したのは、苦痛な顔をした元也の方からだった。
「沙耶ごめん、今日俺先に行ってっ」
「大丈夫、元也だってそんな日もあるよね?
困ったり悩んで事あるなら、いつでも言ってね。
こんな私じゃ、頼りないのは分かってるんだけどね」
こんなところで泣いちゃダメだ。
ちゃんと元也の気持ちを察してあげないと。
元也の話も録に聞かず、遮るように話しかけた。
それを良しとしない聖臣は、恋人を庇い守るように手を掴んで抱き寄せる。
二人の中に亀裂を生むしかない自分を守る盾となる。
聖臣を見れば、真っ直ぐに元也を逸らす事なく見ていた。
ギスギスさせたくないのになぁ。
なんて言えばいいのだろうか?
「沙耶そんな顔するな…元也は、大丈夫だから。
ガキじゃないんだから、言いたくなったら自分から言うだろう」
そう言いながら頭を撫でるものの、腕の力は強い。
ちょっと待って、元也がいる前で。
抵抗しても強く抱きしめられていて、動くのは無理そうだ。
こんなんじゃ、また二人が拗れちゃう。
「元也、さっき言った事だけど曲げるつもりもない。
だからお前次第だ!」
強く言い放った聖臣は、元也をその場に残したまま強引に連れ去り、見えなくなると再び抱きしめられた。
「なんで来るんだよ…」
「元也も聖臣も何か変だから気になって、ごめん」
「あぁ~そんな事言いたいわけじゃないのに、俺こそごめん。
言い方がキツ過ぎた」
「怒ってない?」
「なんで?誰に怒ってるって?」
「勝手に来たから…」
「ふっ怒ってない…沙耶には怒ってないけど、元也には怒ってるよ。
アイツ、本音言わねぇから頭にきてる」
本音ってなんだろう?
「沙耶は、俺と元也どっちが好き?」
唐突に質問された言葉の意味もわからず顔を上げると、なぜだか悲しそうにしている聖臣がいた。