第7章 文化祭② *
「納得してるみだいだな。
まぁ、古森も佐久早も貪欲になればかなり変わるよ」
「貪欲ですか?聖臣も元也もバレーに対して貪欲だと思いますけど。
聖臣は、練習の鬼ですし元也は何だかんだ言って、一緒にやっているか…ら…」
先輩に話しているのは何?私は、バレーをしてるところなんて…見てない?…。
見てないわけないじゃない…アレ?なんで?
「おい!!白城!!」
先輩の声にハッとする。
「大丈夫か?お前、何か思い出したのか?」
「…いえ、別に…」
「…まぁいいわ。それより、2人を連れ戻してきてくれないか?」
「あっはい!!」
慌てて体育館の窓から外へ出ると、不思議と懐かしい気持ちになる。
あそこの角を曲がれば、入学式に見た桜の木が見える。
その時は、聖臣と元也と一緒に満開の桜の木の下で、写真を撮ったはず。
これから始まる高校生活が楽しみで、浮かれていた事を思い出した。
数か月前の事だけど、思い出せたことがすごく嬉しい。
さっきの動揺を消すかのように浮足だしたはずなのに、聖臣の声でそれが一変された。
体育館にいた時よりも、感情が高ぶっているのがわかる。
「元也は、どうする?」
「どうするって何が?」
「俺は、お前に対しても宮兄弟にも、沙耶にも気持ちを伝えた。
お前から何も聞いてない。
元也が、この先沙耶を好きでも、譲るつもりなんてないから…それだけ言っておく」
力強い聖臣の言葉は、先輩の言っていた”真”があるから。
誰にでも優しいわけじゃなく、自分にだけ向けられる優しさ。
そう思うと、次第にドクンドクンと心臓が高鳴る。
私は、聖臣の事が好きなんだ…。
気持ちを自覚すると心が温かくなって、周りも色つき始める。
わからなかった気持ちが、スーッと入ってきてモヤモヤした気持ちもスッキリとする。
ずっと一人だけを思って、優しくしてくれる聖臣が好きなんだ。
けど自覚したからって、すぐ伝えるつもりもない。
ちゃんと皆に伝えてからじゃないと始めれないと思うから。
今は、二人の喧嘩を止めるのが先だ。
足早に二人の元へ、駆けだして行った。