第7章 文化祭② *
二人がケンカなんて、見たのは指折り数えるほど。
どちらか言うと、元也はおっとりな性格で、歳の離れた弟妹がいるから面倒身が良い。
聖臣は、歳の離れた兄姉の末っ子だから甘えん坊タイプかと思うけど、おばさんが厳しい人なのもあってしっかりしている。
そんな二人だから、大きな喧嘩なんてした事がない。
小さい頃の喧嘩なんて、今思えばくだらないものばかり。
喧嘩しても穏やかな性格の元也が、先に謝ったりするから、聖臣もつられて『しゃ~ない』的な感じで折れたりしていた。
けど、今日の二人の雰囲気が重たい。
元也が、不自然に聖臣を避けている気がする。
聖臣が、元也に声をかけた時も只ならぬ雰囲気になり、飯綱先輩も顰め面するほどだった。
その後、何も言わずに去って行く元也を追いかけていく二人に戸惑った。
何なんだろう?すごく不安…。
「不安か?」
「いえ…そんな事ない…わけないですけど…」
「ブッハァ!!煮えきれん感じだな、お前も元也も」
「それ、どういう意味ですか?」
「う~んそうだな…佐久早は、もう腹くくってるんだと思う。
実際、事故の事とかあってかなり気が滅入った時期は、バレーに集中出来てなくて監督にドヤされたりもしてたよ。
誰が見ても不安定だったと思う。
それでも、お前が目を覚ましてから変わったよ、アイツ!」
聖臣が、変わった?
飯綱先輩が言っている意味が、わからない。
「分かんねぇって感じだよな。
まぁ、男って意外に単純だからな。
惚れた女にひどい有様なんて見せられないし、格好いいところだけ見せたいもんなんだよ。
アイツの良い所は、真がぶれないってところ。
だけど、ネガティブ思考はマイナスだよな」
先輩は、笑いながら言いつつ彼を分析し元也は、どう見ているのか気になった。
「元也は、違うですか?」
「古森か…アイツは、基本的に誰にでも優しいだろう?
男女関係なく接するっていい事だと思う。
それは、先輩に対してもだし極端に壁を作ったりしないから、人望は佐久早よりも大きい。
けど、一つだけ足りないものがある」
元也に足りないものなんてあるのかな?
「アイツには、独占欲が佐久早に比べて足りないんだよ。
それは、時にプレーにも影響することだから今後の課題だ」
後輩をよく見ていると感心し、頷くことしか出来なかった。