第7章 文化祭② *
元也side
情けない…何も言い返せなくて…ただ聖臣にムカついた。
不毛だ!なんだって言い聞かせて、肝心な事を聞けてない。
…聞けてないじゃない…聞きたくないのかも知れない。
…分かってた…。
聖臣は、ずっと俺よりも沙耶を大切にしている。
昔から、一途にずっと沙耶だけを想って守ってきたんだから。
そんな聖臣に惹かれるのもわかる…。
でも…。
あの時の沙耶の顔は、いつもの沙耶じゃなくて、うまく言えないけど違ってた。
誰なのか一瞬わからなかいくらい綺麗な女性で、別人みたいに見えた。
あんな顔なんて、一度も俺に見せたことなんてない。
聖臣に縋って甘えた声で呼んだ表情を見た時、心臓がドクリと音を立てるように崩れていった。
そうせたのも聖臣だって、頭の中では理解しようとしても出来なくて苦しい。
「おい、元也!」
追いかけて来た聖臣に腕を取られる。
「なんだよ…」
「あ~もう、言いたい事あるくせに黙んなよ!お前らしくない」
俺らしくない…?
そう…だよな。
いつもの俺じゃない、だって俺は…。
「…聖臣だって何も言わないだろう?俺ばっかりなんでっ…」
「はぁ?だから何の話だよ!俺は、お前に怒らす理由なんて思いつかないだけど?
それとも…昨日沙耶の部屋で何か見たか?」
確信をついた言葉に動揺する。
「ハッ、構かけたのに存外当たりだったとはなぁ。
見たんだろう?俺と沙耶が、キスしてるところ」
なっ!!アイツ構かけてきやがった。
「図星か!隠すつもりもないけど、どうせお前のことだ!パニックになって何も言わずに帰ったんだろう?」
「なっ!!だからそれは…」
溜息をついて聖臣と自然に目が合う。
「俺は、お前にも沙耶が好きだから、誰にも譲るきなんてないって宮兄弟がいる時に伝えたはずだ。
全く伝わってなかったか?俺は、お前に対しても言ったんだけど?
分かってないならこの際はっきり言う…沙耶は、誰にも渡さない!!」
宣戦布告‼︎あぁ、分かってたけどこの気持ちは、紛れもなく嫉妬だ。
自分に出来なかった事を淡々とやってのけて、その上沙耶を独占したがる。
横から掻っ攫う事も出来ないよう、沙耶との間を埋め尽くされる感じだった。