第7章 文化祭② *
聖臣side
沙耶は、俺の気配に気づいていないのか、じっと目を瞑ったままでいる。
長い睫毛とピンク色のふんわりとした柔らかい唇、部活をしていた時よりも長くなった髪は、俺が買ったシュシュで緩く纏められ、少しくづれて髪が落ちていた。
時折、唇が動くと色っぽさが目立つ。
あぁ、マジでキスしたい…あんな顔誰にも見せたくない。
先輩が言うのは、一理あったか…。
「沙耶…」
呼んだ声に反応して、沙耶が夢から覚めるように俺を見つける。
「聖臣?」
屈んで誰にも見せないようにすると、パチリ開いた瞳とぶつかる。
「寝ぼけてんの?」
「寝てないって!もぉ~意地悪」
キスしたい衝動に駆られながらも我慢し、その代わりに頬や髪を撫でてやり過ごす。
「聖臣、今からやるの?」
「あぁ、そうだな。少し走ってストレッチしてからかな」
「じゃ、ここでまた見てればいいの?」
「あぁ、少しここで待ってろ」
頭を人撫でしてから、走っていた先輩と合流したころで、元也が体育館に入って来る。
すれ違っても言葉を発することもなく、黙々とこなしていた。
なんだあの態度?何も話さず、俺と目すら合わせない。
「おい!元也俺や沙耶に言う事ないのか?」
「別に…あぁ先に行った事は悪かったよ。別に遅刻してなかったからよかったじゃん」
はぁ?遅刻しなかったらとか、そんな問題じゃねぇし。
「そうじゃねぇって!!連絡とかできただろう?沙耶が、お前が来るまで待ってたんだよ」
「…それは悪かった」
「なぁ、さっきから、お前なんでこっち見ないんだよ」
また、わざと目線を逸らされる。
「お前大概にしろよ!!昨日から何だよ、不毛とか訳わかねぇ事ばっか言って、答えになってないんだよ。
言いたい事あれば言えよ!!」
「…お前にわかるかよ…」
ボゾリと呟いた元也は、俺とは反対の方向に向かって走っていった。
その様子を見ていた飯綱先輩は、ヤレヤレといった顔で俺の肩を叩きながら、背中は怒っている。
「何があったか知らねえが、お前ら一年ズを試合に出すかは、要検討だな」
「なっ!!」
「連帯責任だ!嫌なら交流試合まで仲直りしろって。
ほら、白城が狼狽えてんぞ、取り敢えずホロー入れておけ」
背中をバシンと勢いよく叩かれ即された。