第7章 文化祭② *
聖臣side
「はぁー…お前に何がわかんの?親友、だから何だよ!
沙耶は、前に進もうともがいて苦しんでる。
しんどいくせに、俺達に悟られないように本音隠して戦って…。
俺は、そんな沙耶を支えてやりたいだけだ」
何も言えなくなった木崎を置いて、体育館に向かって行く。
体育館では、飯綱先輩がさっき言ってたような状態になっていた。
さながら蝶に群がるハイエナのように男子部員が、沙耶に近づこうとすると、飯綱先輩の激が体育館に響いて牽制されていた。
俺に気づいた先輩は、睨み付けてくる。
今日は、木崎といい先輩といい厄日か?
「遅くなってすみません」
「ほんとなぁ、おせぇよ!」
「元也、来てますか?」
「いやまだ、あっ!!来たな」
先輩は、元也を見つけるなりブンブンと手を振るが、こっちに来ることもなく、先輩に向けてお辞儀をして更衣室に向かっていく。
「なんだアイツ?もうしかして、お前と喧嘩でもしたのか?」
「別にしてないですよ…」
素っ気無く先輩との目線をワザと外すと、また頭をグシャと撫でられる。
ホントこの人は、俺を小さいガキか何かと勘違いしてるんじゃないのか。
「程ほどにしておけよ。交流試合も近いからなぁ。
元也が取って、俺からお前に渡すパスが欲しいしな。
さて、その話は終わりにして本題に行こうか」
策があるような自信たっぷりの飯綱先輩に釣られて、『はい』と答えた。
「策って程のことじゃないけど、白城がみたいって言っていたスパイクって、お前的にどんなんだと思う?」
沙耶が、見たいスパイク…。
昔から、きわどいコースに入れると喜んでたし、プロックの隙間から打つと感嘆の声が漏れていたような…。
意外と難しい…。
「そんなに難しく考えなくってもいいんだけど、まぁ一番はお前が高く飛んで、ぶっ放すところとか見せたらいいんじゃない?」
「そうなんですけど…」
何か違う気もするけど、やらないよりはマシか。
「沙耶をこっちに連れてきます」
沙耶の元へ一歩ずつ近づくにつれて、やけに緊張する。
あんなに怖かっていた体育館に連れてきて、音楽を聞いていても不安だったに違いない。
目を瞑っている沙耶の前に立つと、その不安要素が嘘のように、凛とした姿が綺麗だと思えた。