第7章 文化祭② *
先輩に食ってかかろうとするなんて、何考えてるの?
それも、部活の先輩に楯突くなんてありえない。
スポーツやっていたら上下関係だって厳しいはずなのに、私を庇おうとする。
「聖臣いいから!大丈夫だから」
「何言ってんの?手震えてるくせに」
右手をギュっと握られて、震えてる事もすでバレている。
それでも、聖臣に言い聞かせるように『大丈夫だから』と言い続けていると、それをずっと聞いていた先輩が、段々と険しくなっていく。
「おい!佐久早いい加減にしろって!お前の態度も言葉も過保護すぎんだよ。
それに、白城は痩せ我慢しすぎだ!佐久早に甘えられる時は甘えろって。
ほんと、お前らの会話聞いてるとイラつくし、言ってる事とやってる事に納得出来ない」
「先輩に納得してもらうとか思っていません。
それに、怯えてる沙耶を無理やり連れて行っても意味がない。
沙耶自身が、俺の横に立ちたいと思ってくれないとダメなんです」
「しかしなぁ〜気長に待っても、佐久早や白城も高校生活は短いんだ。
あっという間に卒業するし、いつまでも嫌な事を後回しにしてたら、白城はお前がいないとダメになるぞ。
大体、ずっと傍にいることなんて不可能だろうが!
それに、いつか皺寄せがきて、お互いを潰し合ってもいいのか?」
先輩の言葉が、胸に刺さる。
お互いに潰し合うって、また聖臣に嫌な思いさせちゃう…。
この先の未来も、聖臣の足枷になるくらいなら…離れるべきだ。
一歩聖臣から下がると、グイっと力強く引き寄せられる。
「聖臣離して!」
力強い腕は、いつも心地良いのに聖臣から離れなきゃダメだって警報が鳴る。
「沙耶を手放す気なんて更々ない。
沙耶が、俺がいないとダメになってもいい。
ずっとそうであって欲しいって、願ってたから」
えっ⁈何それ?聖臣は、望んでいるの?そんなのダメに決まってる…何言ってるの?
頭の中が、グルグルと回りパンク状態だ。
ただ、『ここから、逃げたい』と後退しようとするが、聖臣の力に押されて腕の中にすっぽりと納まる。
いつもなら安心する場所なのに、ドクドクと鳴る心臓が痛い。
不安に揺れていると大きな手が、いつものようにポンポンと撫でてくる。
言葉にしなくても分かるよ。
聖臣は、いつもそうやって甘やかすから。