第7章 文化祭② *
体育館に行くのは怖いけど、聖臣と離れるのは嫌って私の方が、聖臣よりも我儘を言っている。
朝練に行かなきゃいけないのに、中々『行く』と返事が出来ない。
「やっぱり無理は、ダメだ!保健室行こう」
聖臣が、手を引っ張って体育館とは逆の方向へと歩き出そうすると、後ろから声を掛けられる。
「おはよう、佐久早と白城」
「『おはようございます』」
咄嗟に挨拶をするも、その人が誰なのかわからない。
靴紐見るからに2年生だよね?ジャージ姿…バレー部の先輩?
名前呼ばれたってことは、私の事を知っている人?
人見知りじゃ無いくせに聖臣の後ろへ一歩下がり、露骨に警戒した態度で先輩に牽制する。
過敏な態度をとってしまったせいで、聖臣も自分の背中にあえて回して見えなくしてくれた。
「プッファ、佐久早そんなに露骨な態度とるなよ。
別に取って食ったりしないって。
古森から聞いてた通り、過保護だなお前」
聖臣の隙間から見る分には、悪い人には見えない。
それに、キツい言い回しをしている割には、後輩に対して愛情を感じられる。
それよりも、自分より目線が高い人って高圧的な人が多い思っていたけど、とても爽やかな笑顔で笑う先輩だ。
「体育館と反対方向に向かうってことは、保健室にでも行くのか?」
「はい…」
「まぁ、白城の事があるからだと思うけど、遅刻とかいい度胸じゃん!
自主練とはいえ、スタメン候補にお前は選ばれたんだ。
まぁ、普段のお前の練習態度を見てるから強くは言わないが、自覚が足りないじゃ無いか?」
えっ!どうしよう…私のせいで嫌な気持ちにさせてる。
早く弁解しなきゃ、でも何て言えば…。
「そんな風に思われたんなら、すみません。でも、今は沙耶を一人になんて出来ません」
私のせいで、頭を下げさせていると思うと胸がキューとなって苦しい。
「あの…私のせいなんです!聖臣は、私の我儘に振り回されてるだけなんです…すみまっ」
「なら、申し訳ないと思うなら、俺達に付き合ってもらうか?」
遮られた謝罪に、先輩から交換条件を突きつけられる。
付き合ってもらうって何?不安な顔でいると、聖臣が先輩に食ってかかる。
「何言っているんですか?沙耶は、悪く無いしそれに、何させるつもりなんですか?」
睨み合う二人に心臓が、ドクドク鳴り響いていた。