第7章 文化祭② *
黙ったまま視線を徐々に床に降ろしていく。
あぁーやだなぁ、また気づかれてしまう。
怖い…こんな自分に愛想つかして嫌われてしまう…。
「入学式とか全校集会とか体育の時も使用しているから、沙耶も覚えているんじゃないかな。
結構日当たりが良いから、夏は暑いけど今はちょうどいい温度かもな」
「…そうなんだ…」
下ばかり俯いている私と目線を合わせるために、しゃがんで下から私を見てくる。
「…沙耶は、体育館に行くのが怖いか?」
手に汗が、ジワリと熱が籠る。
あんなに向き合わないと言い聞かせてきたのに、自分が想いもほか意外に脆い。
「…うん…怖い……」
「そっか…」
『怖い』と、素直にポロッと言えた事に驚いてしまう。
言うつもりはなかったはずなのに、素直に伝えてしまい少し後悔する。
けど、聖臣は怒ったり不満な顔をせず、寧ろ表情が柔らいでいく。
何でそんな顔するのかわからないでいると、頭を撫でられそのまま頬を両手で摩っていく。
くすぐったくなって自然と顔を上げると、聖臣と目線が合う。
柔らかな表情のまま、お互いのおでこをくっつけ合った。
「ちゃんと言ってくれて、ありがとう」
その言葉に心の奥がじわりと温かみを持ち、スッーと入ってくる。
「そのまま保健室に行こう」
腕を伸ばした聖臣の手は、必ず私が握るまで待っている。
こういう時ほど、私の事を尊重して歩幅を合わせてくれるところとか、本当に昔から変わらないし、聖臣のぶれない所。
恐る恐る手を握ると、歩き出す聖臣の力強い手に安堵して、この手を離したくないと思う。
きっと、それ言ったら聖臣を困らせちゃうし、かと言って体育館行くのは怖い。
それでも、今は傍にいたくて咄嗟に聖臣の腕を掴んでしまい、身動きが取れなくなった。
「沙耶どうした?保健室は、体育館と反対方向なんだけど」
どうしよう、聖臣困っているな。
一人で保健室行くって言えばいいのに、その言葉は胸につっかえたまま言えないでいる。
口をパクパクしていると、聖臣に引き寄せられ温かい腕の中にスッポリ収まる。
「もしかして、一人は嫌か?」
「えっそんな事…ないよ」
「本当に?」
「じゃ、一人で行ってきて」
さっきと違って、突き放された体と冷たい声にビクリと震えてしてしまう。