第7章 文化祭② *
しばらく電車に揺られながら、学校に近い駅に着く。
相変わらず、聖臣は手を繋ぐことを辞めない。
「走る?」
「いや大丈夫だ」
聖臣の時計を見る横顔が、何気に好きだったりする。
征兄から入学祝いに貰った腕時計は、ちょっと大人びたスタイリッシュな黒と紺色のデザインにセンスの良さ感じる。
その逞しくなった腕から、チラリと見えるのもカッコイイ。
あんまりガン見してると、また揶揄われちゃうから内緒にしとこう。
「今日も温かいね、空が高くて蒼いし気持ちがいい」
「今週いっぱい文化祭の準備とかでバタバタすると思うけど、無理せず沙耶のペースでいいから、参加してみるか?」
「そうだね…今日は取り敢えず、皆におはようって言うところから始めないとね」
『そうだな』と頭を撫でながら、背中を押してくれた。
学校に近づくにつれて、気持ちが落ち着かない。
自分でも知らずに握る手も力が入り、遂には立ち止まってしまう。
俯いていると、聖臣からギュギュっと2回手を握り直して、力を抜くように優しく即されているみたいだった。
「沙耶、大丈夫だから」
優しく声をかけられ、何も言わない私を昇降口まで連れて行ってくれる。
そのまま下駄箱に入ると昨日と同じ女子生徒が、にっこり笑っていた。
「昨日は、急に声をかけてごめんなさい。
私は神崎、よろしくね白城さん。佐久早君もおはよう」
「ウッス」
目線すら合わせない聖臣に驚きつつ、私といる時と比べてかなりの態度の悪さ。
気を悪くしてないか心配だ。
「おはよう、神崎さん。こちらこそ、昨日はごめんなさい」
素直に謝れた事に少しだけ安堵する。
神崎さんは、ニッコリ笑ってくれてその場を立ち去って行った。
「俺は、これから朝練に行くから、沙耶ちょっとだけ付き合って」
「私も行くの?邪魔にならない?」
昨日の今日で体育館に行くのは、何故だか気が引ける。
「見てるだけだし邪魔にならない。
寧ろ見て欲しいんだけど、俺のスパイク」
「スパイク?」
「そう、スパイクしてるとこ」
「いや〜私バレーとかよくわからないし、えっーと何もアドバイスとかできないからいいよ」
言い訳を並べて逃げ腰になってしまう。
以前の自分じゃ考えられないくらい、自分自身に愕然としていた。