第7章 文化祭② *
駅に着けば、色々な学校の制服の子達が電車を待っている。
結構早くからみんな来てるんだ。
そう感心しながら、元也を待っていたけど来そうにない。
「ねぇ、聖臣、元也遅くない?」
「そうだな、電話してみるか」
聖臣が、携帯にコールしても出ない様子。
「チッ、あいつ寝坊してるのか?」
人込み嫌いな聖臣は、マスクを常に常備し臨戦態勢。
マスク越しでも否応無しに、不機嫌さが露わになる。
怪訝な顔つきで再度連絡したが繋がらず、LINEにも既読がつかない。
ちょうど、’’プルン’’とLINEの着信音。
結衣ちゃん?
「結衣ちゃんからLINE入ったよ。
元也と一緒にいるって、なんか文化祭の実行委員の手伝いしてもらってるみたい」
「あのバカ、それなら連絡寄越せよな!急ぐぞ沙耶」
急に引っ張られて走りだし、ちょうど来た電車に乗り込む。
やはりラッシュ時間が迫っているため、人が増えている。
「沙耶こっち来い」
壁際にグイっと引き寄せられ、長身な聖臣の腕の中にすっぽりと納まる。
「人増えてきたね、朝練間に合いそう?」
「ギリかな?あいつ、後で文句言ってやる」
「もう、怒んないの!元也だって急に結衣ちゃんに頼まれたかもしれないじゃん?」
「だとしても!普通言うだろ?」
「まぁまぁ~駅に着いたら、聖臣だけでも走って行けば間に合うかも?」
「沙耶を残してまで走らない。
それに、今週は朝練っていっても個人練習だし、少し遅刻しても文句を言われない」
そうなんだ。
いつも朝練とか行ってるのかな?
なんか私が傍にいたら、しなきゃいけない事も制限されるのは嫌だな。
「聖臣…」
『何?』と聖臣が、マスク越しなのにも関わらず、耳元で囁く声が余りにも優しくてちょっとクラクラしてくる。
「フッ、顔真っ赤沙耶って、耳ダメだよな?」
なっ?!!耳を抑えて聖臣の胸に蹲る。
「どうした?」
クスクスと笑う聖臣に遊ばれている。
「聖臣近くない?」
「何それ?近寄ってんの、沙耶の方だろう?」
「それは…揶揄われて真面に顔を上げられないから、抱きつくしかないの」
「ふ~ん、顔上げられないのも抱きつくのも、それだけが原因じゃないだろう? 」
わかってるなら聞かないで欲しい。
こんな時、ホント意地悪だ。