第7章 文化祭② *
頭を人撫でして、いつもの聖臣で接してくれる。
「沙耶の事、心配なんだ。それだけは、分かってて欲しい」
「うん、ごめんね」
「いいよ、そんなに怒ってないし、行くぞ」
ホッと胸を撫で下ろし、聖臣の後を追って行く。
今日は、クラスの皆と普通に振る舞えるように、努力していこうって決めた。
靴の紐を強く結びながら、玄関前の鏡に映る自分の姿に『大丈夫だよ』とエールを送る。
その場を離れようとすると、鏡に映る私は手を上げて、薄気味悪く微笑みながら手を振っていた。
『今日も壊れて落ちてきてね…』
その言葉を聞いて、一瞬にして目の前が暗くなる。
足元がグラリと倒れる寸前に、聖臣に支えられる。
「沙耶?沙耶真っ青だぞ」
「えっ?何?…何でもないから。
…大きな声出さないで、おばさんに聞こえちゃう」
「何言ってるんだよ!お前顔見てみろ」
「イヤ!!」
鏡を見せようとする聖臣に抱きついた。
「沙耶どうした?」
困惑する聖臣を跳ね除けて、先に玄関を開けて進んで行く。
「沙耶待て!!」
後から抱きしめられて、両手にギュっと力を籠める。
嘘をつかなきゃ、また聖臣にあんな顔させちゃう…。
心配させたくない。
「あっははは、引っかかった」
「おい、沙耶!!」
大丈夫だから、大丈夫だよ。
聖臣が何か言う前に、聖臣にキスをする。
「大丈夫だから、心配しないで。
アレだよ!鏡見た時、貞子が出そうとか思っちゃって、バカだよね~あんなの映画の話だし」
「沙耶、お前何言って」
ダメを押しでもう一度、聖臣に抱きつく。
「沙耶…本当に大丈夫なのか?」
聖臣の問に、ちゃんと目を合わせて言葉で伝える。
「もちろん、大丈夫。だって、聖臣ずっと傍にいてくれるんでしょう?」
コクリと頷いて頭を撫でてくれる。
「だったら、大丈夫だよ」
とびっきりの笑顔で聖臣に送る。
それが、嘘の笑顔でも…。
手を繋いで聖臣に寄り添う。
繋いだ手を恋人繋ぎに変えて、元也が待つ駅に向かった。