第7章 文化祭② *
聖臣side
イヤイヤしてる割には、力が弱い。
顔だけ横向きになり、今にも泣きそうな沙耶をこれ以上は無理だと悟る。
「聖臣、意地悪…」
「何で?さっきも言ったけど、何の夢を見ていたか知りたいだけだ。
そんなに話したくないなら、いいよ」
沙耶と目線を合わせず、スッっと離れてみる。
咄嗟にシャツを掴まれて、口角が上がる。
「何?」
まだ、目線を合わせない。
沙耶から言わせたい。
「あの…待ってえぇーっと、あのね聖臣…怒ってる?」
「別に…怒ってない」
「怒ってないなら、こっち向いて」
甘えた声で、シャツをグッと引っ張ってくる。
あぁ~また始まった。
沙耶の甘えん坊。
素っ気無くすると、すぐに不安がる。
不安にさせたいわけじゃないから、沙耶の頭を撫でてちゃんと目線を合わせる。
そうするとホッとした顔で、縋りついてくるんだ。
「別に怒ってないけど、話したくないなら別にしなくていい。
ただ、あんな顔してたら誰だって聞きたくなるだろう?」
「えぇ?どんな顔してた?」
「う~ん?幸せな顔、ちょっとニヤケてて少し気持ち悪い」
「あっ、私そんな顔してた?」
「割りと!」
今度は、頬が膨れてムスッとして不貞腐れた表情にコロッと変わる。
沙耶は、昔から感情の起伏が激しいと思う。
クルクル変わる表情は、見てて飽きないけど。
「どうした?」
「むぅ、だってニヤケ顔が、気持ち悪いってヒドイ!」
「フっ悪い、ついな」
「もう!」
「ごめん、そんなに怒るな」
髪を梳かすように宥めていると、小さな子供をあやしているみたいだな。
けど、昨日の夜もその前も、幼い子の顔なんてしてなかった。
本当は、さっきも色っぽい顔で誘惑されてるみたいで、起きなかったら成すがまま深いキスをしていただろう。
それを悟られまいと嘘をついたのは、内緒だ。
「あのね…聖臣のその顔で、いっぱい…キス…されてた」
「へぇ~夢の中の俺って、そんなに節操無しなわけ?」
「まさに猛獣だよ」
猛獣?と考えていたら、甘い香りと沙耶の柔らかい唇。
甘いと嗜好が判断した途端、貪りつくしたくなる。
沙耶が言った通り、猛獣だな。
そう思いながらも尽かさず、舌を入れてお互いに絡ませた。