第7章 文化祭② *
元也side
朝は、いつもようにやってくる。
起きるなり、重い体を押してランニングへと向かう。
昨日、あの後どうやって家に帰ったのか記憶に無いくらい、ひどく混乱していた。
そのまま、風呂に入って何も考える事も出来ず、気がついたら朝になっていた。
寝たのか…ぼんやりと動く思考は、聖臣達の事。
首を大きく振って、寒い朝空に向かって走りだした。
この時間帯は、聖臣と会う可能性もあるから、いつものコースから外れ川沿いの道を無我夢中で走っていた。
思考を停止しようとしても、あの甘ったるい沙耶の声と仕草が、目に焼き付いて忘れられない。
病院でキスをした時は、あんなに震えていたのに、昨日みたいな色っぽい大人の表情もできるんだなぁ。
それにしたって、あんな沙耶は、知らない。
頭の中で繰り返し見る映像が、胸の心拍数がを跳ね上がらせる。
冷静になれ!と問いかけても何がなんだか分からなくて、急展開すぎだ。
あの時、征兄が言っていた『監禁だけじゃ済まないだろう?突っ込むだけ突っ込んで』って、そう言う事をしてたって事だよな。
もう既に沙耶は、聖臣のものになっていた…。
俺の入る余地なんてないじゃん。
「クソ!!」
地面を蹴り上げ、遠く澄み切った朝空を見上げて立ち止まる。
冷たい風にジリジリ痛む頬は、失恋の意味をなすのだろうか。
そのまま家に帰り、沙耶達を待たずに学校へと一人向かった。