第7章 文化祭② *
元也side
このバカ力!俺達は、仮にも選手なのに力強すぎだ。
「痛いっ!聖臣、離せよ」
「だから、俺に言いたい事あるなら言えって、さっきから言ってるだろう?」
「もう、それはいい…」
「ふざけるな!お前が、先に振ってきた話だろう?先に終わらすなよ」
「…不毛なんだよ…」
ボソリと呟いた言葉に聖臣は、舌打ちながら腕を離していく。
「チッ、マジ分かんねぇ」
気持ちが、ドロドロになっているのに、舌打ちとかされたくない。
ただ、【不毛】って言葉が、今の気持ちにぴったりだと思ったのは間違いじゃない。
沙耶の事を俺よりも気づいて、それに甘える沙耶は、俺に見向きもしない。
それって、不毛でしかないじゃん。
「ごめん、聖臣…俺、気持ちに余裕ないって言うか、俺自身も気をつけたいって思うような所とかあってさぁ…うまく言えないけど…」
下を向いてしゃべる事しか出来なくて、今のままじゃ聖臣と対等になれない。
「悪かった…俺も沙耶の態度が、ムカついてお前に当たった」
「別にいいよ、ただ、沙耶が、傷つく態度はとるなよ」
「分かってる…俺もあの態度は、ないって思ったから気をつける」
「『………』」
二人とも無言でいると征兄が、ノックして入って来る。
「青春してるとこ悪いけど、ご飯出来だぞ。
元也の分もあるから、食べていけよ。
俺は、急患で呼び出されたから病院戻るから、沙耶の事、頼んだぞ」
「征兄、もう行っちゃうの?」
「ごめんな、元也。マジで急患だから、人で足りないみたいだし、もう行く」
俺達の頭を撫でて、『戸締りよろしく』と急いで病院へと向かって行った。
聖臣と喧嘩なんか、記憶にないくらいした事なんてない。
「征兄が、折角作ってくれたんだし、食べよう」
「そうだな」
テレビをつけて、お互い無言でご飯を食べた。
一通り片付けを終えて、聖臣は、いつものルーティンを崩さず、風呂に入る準備に向かう。
「元也、今夜泊まっていくか?」
「いや、沙耶の様子みたら帰るよ」
聖臣は、『そう』と一言呟き離れていく。
何だこの感覚!居心地が悪い。
沙耶の様子みたら帰ろうと思っていたが、少し扉の開いた聖臣の部屋に目が移る。
あの本…。
自然とその本に手を伸ばした。