第7章 文化祭② *
元也side
部屋を出るなり、無言で聖臣の部屋に連れて行く。
「元也、腕痛い…離せよ!」
振り切られた腕をもう一度掴んで、睨みつける。
「このバカ!!あんな態度とったら、沙耶が気にするだろう?」
「何が?」
喧嘩してる場合じゃないのは分かっているけど、聖臣の態度が気に食わない。
「だから、そのしかめ面だよ!沙耶の不安を煽るなって話」
「別に…」
「分かってんの?今日沙耶が、倒れたんだよ?」
「分かってる…いい加減沙耶は、俺に頼ればいいんだよ。
いつまでも無理して笑ったり、辛いなら辛いって言えばこんな状況にならなかったんだ!!」
壁隣で寝ている沙耶に、気づかれるじゃないかってくらい大きな声で怒鳴る聖臣に、圧倒されながらも何も言い返せない。
俺だって、沙耶の事分かっていたら、こんな状態になんてさせなかった。
聖臣は、沙耶のちょっとした変化でも分かってしまう。
俺は、周りに悟られないよう、誤魔化す沙耶を見抜けれない。
聖臣との差に、いつも置いてきぼりを喰らう。
小さい時は、それでもよかったんだ…。
沙耶の笑顔が、俺にも向けられている実感もあったし、頼られる事もあったから。
今は、なんか違う…。
違うって…いつからか?
朝、一緒に登校した時も俺の近くにいたはずなのに、真っ先に聖臣の腕を掴む沙耶を見て、俺じゃないんだって思った。
何も言わないその態度も、分かっていて行動をする聖臣も、何も出来なかった俺自身にも腹が立つ。
「じゃ…分かってたんなら、沙耶にそうやって、言えばいいじゃん。
何で、聖臣は…俺よりも近くにいるのに、俺よりもお前に甘えてくるのに、何でだよ…」
「…元也?」
「…ん、何でもない」
視線を逸らし、本棚に移すと懐かしい本があった。
ある少女と2人の少年の話。
3人は、小さな島で暮らしていて、どちらかを選べば、自分が幸せになれると言う。
遂に二人の少年は、少女を取り合い険悪になる。
それが嫌になった少女は、争う二人の仲を元通りにさせるため、姿を消した。
その後どうなった?
「おい、元也さっきからなんだよ!言いたい事があるなら、はっきり言えよ」
聖臣が、俺の襟首を掴み壁に押し付けて来た。