第7章 文化祭② *
元也side
一回りも歳上の不貞腐れた従兄に、溜息が出る。
「冗談通じねぇの!そんなに心配なら、鎖でもつけて監禁したらどうだ?」
監禁!はぁ?!何言って…。
「監禁できるなら、とうの昔にしてるよ」
聖臣からそんな事言うなんて、売り言葉に買い言葉じゃん。
「へぇ~ガキのくせに、監禁だけじゃ済まないだろう?
突っ込むだけ突っ込んで、体を酷使させるなよ。
沙耶は、まだ本調子じゃないから、そこんとこお前がしっかりしろよ」
「分かってる‼︎今夜は、話だけにするから。
ただ、沙耶の返答次第じゃ、どうなるか分からないけど?」
…何?今の?どう言う事?
まるで聖臣が、沙耶と関係を持ったみたいじゃん。
征兄も征兄だし、聖臣も聖臣だ。
よく状況がつかめないまま征兄は、医者らしく聴診器で鼓動を聞いている。
征兄は、『大丈夫そうだな』と言いながら、沙耶が、食べたいと言ったリゾットを作りに部屋から出て行く。
残った俺と聖臣は、少し眠そうな沙耶の頬に触れる。
「心配かけてごめんね」
「いいよ…ちょっと吃驚したけど、聖臣がさ…かっこよく沙耶を助けたんだよ。
公開キスまでして、なんか俺…いっぱいいっぱいになって、見てる事しかできなくて…ごめん」
不甲斐ない気持ちを謝ることでしか出来ないし、聖臣と征兄との会話も気になる。
「謝んないで沙耶、俺もちゃんと聖臣みたいに対応できるようになるかさ、俺の事も頼ってよね」
ニッコリ笑い、早く沙耶を安心させたかった。
沙耶が、いつも通りの笑顔で『ありがとう』って言ってくれたから、このモヤモヤも少しは晴れるだろうって思っていた。
反対に聖臣は、浮かない顔で俺達の会話を聞いている。
沙耶が、笑顔を俺に向けただけで、しかめ面をしたまま黙っている。
そんな態度していたら、沙耶が気にするのに何やってんだか。
長年見てきた従兄弟だし、性格も分かっているから諦め半分で見ていると、沙耶が不安そうにしている。
ほらみたか!
「聖臣、心配した?」
沙耶に、問いかけられても反応がない。
この場の重い空気に耐兼ねて、『ご飯出来るまで、もう少し休みなよ』と言ながら、強引に聖臣を連れて部屋を出た。