第1章 シュガーリィは魔法仕掛け
クルーウェルはジッと彼女の左手の小指を見る。しかし矢張り彼には見えなかったようで、「確かに、俺には見えんな」と呟いた。
「まぁ、十中八九あの魔法薬が原因だろう。あの時の薬の色とお前の言葉を信じるなら、お前の被ったあれは"幻想視覚薬"だ」
幻想視覚薬。
聴き慣れないその名前にユウは首を傾げる。
「簡単に言うと、普段は目に見えないものが見えるようになる薬だ。人によって見えるものは様々だが、今回お前はその赤い糸だったというわけだ。特に身体に害はないから安心しろ」
再び小テストへと視線を落とすクルーウェルに、ユウも視線を自分の小指へと向ける。
「……この赤い糸って何か意味があったりするんですか?」
小指に視線を向けたままそうクルーウェルに尋ねれば、彼は訝しげな表情を浮かべユウを見た。
「何だ仔犬、赤い糸意味を知らないのか。"運命の赤い糸"とよく言うだろう。いつか結ばれる者同士が糸で繋がれているというものだ。エレメンタリースクールの生徒でも知ってるぞ」
一応ユウも運命の赤い糸については知っていた。しかしここは自分のいたところとは違う異世界であった為、赤い糸の意味も違うのではないかと思ったのだ。
しかし赤い糸の意味は同じだったようで、無駄に呆れられてしまいユウは少し不服だった。