第7章 はだかのままのヴィナス
ユウはジャミルの背中にしがみつき空を飛んでいた。
絨毯で飛んだ時とはまた違うそれにユウは半ば悲鳴に近いような声を上げる。
「どうだ、初めて箒で飛んでみた感想は」
「こ、怖凄いです……!」
風の音に混ざり聞こえてきたジャミルの声にユウは何とか振り絞った声を張り上げる。
「何だそれは」という声と共にジャミルの背中が揺れた。
まだ捕まるところがない絨毯よりはマシかもしれないと思ったが怖いものは怖い。
薄めで周りの景色を見てみるが、彼女はすぐに瞼を閉じいっそうジャミルにしがみついた。
ジャミルの背中は細身だが、鍛えられてガッシリとしている。
そしてフロイドとは違い彼の背中は火傷してしまいそうなくらい熱かった。
「……そんなにくっつかれると、流石に照れるんだが」
ジャミルが振り向く。
ユウは「すみません」と謝るが身体を離すことができない。普段の彼女なら好きな人に大胆に抱きつくなんて絶対にできない事だが、今はそんな事言っていられないのだ。