第7章 はだかのままのヴィナス
柔らかな膨らみがジャミルの背中に押しつけられ、彼はピシッと石のように固まる。
意外にも彼は幼少期からカリムの世話をしていた為、女性とお付き合いをしたことがなかった。そのためこのように密着されるのは初めての経験だった。
ジャミルの褐色の肌がほのかに赤く染まる。
その赤みは耳まできていたが、目を瞑っているユウがそれに気づくことはなかった。
アズールは下から2人が飛ぶ様子を眺めている。
遠すぎて表情まで窺えないが、それでもジャミルが楽しげな雰囲気を纏っているのは分かった。
「珍しいこともあるものですね」
2人を見上げながら呟く。
アズールは最近、本当にたまたま学園長と他の教師のある会話を聞いてしまった。
その会話の内容はユウのことで、異世界……彼女の故郷へと鏡を繋げる方法がもう少しで分かりそう。というものだった。
アズールは眼鏡のブリッジを持ち上げる。
フロイドはユウのことが好き。
これはフロイド本人から聞いたことだ。
ジャミルは……どうなのだろう。
恋愛的な意味で好きかはわからないが、ああして箒の後ろに乗せるほどだ。けっして嫌ってはいない。
もし仮に、ユウが元の世界に帰るとなった時、彼らはどうするのか。
アズールは薄い唇を歪ませ、
「その時は見ものですね」
と呟いた。