第7章 はだかのままのヴィナス
ドサっとアズールが箒から落ちる。
箒は数十センチしか浮かんでいなかったため、勿論怪我の心配はない。
ジャミルは腹を抱えて笑っている。
ジャミルの笑いが落ち着くと、彼はユウに「一度も飛んだことがないのか?」と聞いた。
それに対し、魔法の絨毯でなら飛んだことがあると答えるとジャミルは自らの顎に手を当て考える仕草を見せると、おもむろにバルガスの方へ歩いていった。
バルガスと数度言葉を交わすとジャミルは戻ってくる。
そしてアズールに「ちょっと借りるぞ」と彼の返事を聞く前に箒を奪い取った。
箒に跨るジャミルを見つめていれば、彼と目が合う。
彼の切れ長のオニキスのような瞳は、学生とは思えない色っぽさを持っていた。
目が合い、ユウは暫く反らせずにいると、ジャミルが顎で自分の後ろを指しながら「乗れ」と彼女に言った。
「え、」
ユウは目を瞬かせる。
「安心しろ。俺は飛行術が得意なんだ」
ユウはジャミルと箒を交互に見やると、彼はニヤッとした笑みを浮かべた。
「俺を信じろ」